鬼門を突破し証明した確かな成長
チュニジアとの試合は、初戦直後に監督を解任しており、戦略や戦術が見えず不気味な存在となっていた。しかし、選手間で気を引き締め直した日本に隙はなかった。危機を招きかねない相手のストロングポイントに冷静に対応したうえで、弱点を突いて白星を挙げた展開は、狙いどおりにゲームを進められた証拠といえる。欲をいえば、もう少し早い時間帯に3点目を奪いきって早めに勝負を決め、大勢を決したかったところだが、それは贅沢というものだろう。今までのワールドカップにおいて、日本は第2戦が鬼門になっていた。実際、2002年の日韓大会以外は勝てておらず、ジンクスというより明確な課題と捉えたほうが正確かもしれない。とはいえ、鬼門であろうが課題であろうが、日本がまた一つ階段を上ったわけだ。これもまたチームが成熟している証明といえよう。
30年で激変した世界との距離感
ここ30年ほどにおける日本サッカーの成長曲線は、世界的に見ても目を見張るものがあり、まさに驚異的だ。30年ほど前はワールドカップの舞台など夢のまた夢であった。1993年5月にJリーグが誕生し、同年10月にドーハの地で過去最大級に本大会へ近づいたが、あと一歩で届かなかった。1996年には28年ぶりに五輪への出場を果たし、マイアミの奇跡と称賛されたブラジル戦での薄氷の勝利を収めたものの、グループリーグ突破には至らなかった。そして、直後のワールドカップ予選では苦しみながらも悲願の初出場を決めたが、本大会では3戦全敗を喫し、大きな壁を痛感させられた。
その後、2002年大会では開催国としての後押しもあり、初の決勝トーナメント進出を果たす。それ以上の結果を期待されて臨んだ2006年のドイツ大会では1勝もできずに敗退。続く2010年の南アフリカ大会では、開幕前の前評判が悪かったにもかかわらず、下馬評を覆して決勝トーナメントに進出した。この時期にはすでに、ワールドカップに出場することを当然と捉える世代が育ちはじめ、目標はいつしかグループステージ突破へとシフトしていった。
続く2012年にはロンドン五輪でベスト4に進出。世界との距離も縮まり、勝てるという成功体験を積み重ねていく。しかし、2014年のブラジル大会では2006年と同様に、トップクラスとの差を改めて突きつけられる大会となった。
格上相手に「一歩も引かない戦い」が見たい
このまま世界との差を縮められないのかと、閉塞感が漂うなか突入した2018年のロシア大会だったが良い意味で予想を覆した。記憶に新しい2022年のカタール大会では優勝経験国を撃破したうえ、“死のグループ”を突破。そして、今大会でもほぼグループステージ突破を確実なものとし、世界と対等に渡り合える実力を証明してみせた。先述した40代以上のファンには加速度的な成長が信じられないかもしれないが、近年の好結果しか見ていない10代にとっては、もはやグループステージ突破は当たり前の感覚なのだろう。むしろ今や堂々と優勝を目標に掲げるようになっている。
決勝トーナメントの相手はブラジル、モロッコ、フランスあたりが有力視されている。いずれも格上ではあるが、対等に戦える姿を示して勝利を掴み取ってほしい。日本の成長速度を落とさないためにも、一歩も引かずに結果を残してほしい。今大会の結果次第で10年後には、どこと対戦しても勝てるから同じという感覚が当たり前になるかもしれない。それゆえ、日本が真の優勝候補へと進化するためには欠かせない道のりであり、乗り越えなければならない壁なのだ。
スウェーデン代表の特徴は?
話を先に進めすぎてしまったが、日本代表は抜かりはなく目の前のスウェーデン戦に集中しているはずだ。決勝トーナメントを見据えて勝敗をコントロールしたり、メンバーを大幅に入れ替えたりする戦略や戦術は考えられるが、いずれの選択もメンタルへの影響は避けられない。その影響と得られる効果を天秤にかけた場合、気持ちよく白星を挙げて決勝トーナメントに進出したほうがプラスに働くと考える。
スウェーデンは簡潔にいえばチュニジアの上位互換といえるチームだ。しかし、それはあくまでも個人レベルの話であって、チームとしての連係や連動といった組織力では大差がない。ヴィクトル・ギェケレシュの決定力、アレクサンデル・イサクのスピード、ヤシン・アヤリの中距離砲といった個の武器には警戒が必要だが、それらが組織として連動して迫りくることはほぼなく、個々の仕掛けにとどまるため対策もしやすい。
過去最高の景色へ向け、悔いのない試合に
守備においてもスウェーデンは連係や連動性に欠け、スペースを守るカバーリングが疎かになりやすい。結論をいえば、チュニジア戦の戦い方を同クオリティで実行できれば負ける相手ではない。よって、コンディションに大きな影響が出ないのであれば、チュニジア戦と同じ先発メンバーが望ましい。それで早めに複数得点を奪って試合を決め、選手交代によって主軸の疲労軽減を狙う展開が理想的ではないだろうか。
優勝まではあと6試合。日本にとって過去最高の景色まではあと3試合。どの相手であっても圧倒して勝てる姿を見せて、本当の意味で日本サッカーをさらなる高みへと導いてほしい。
<TEXT/川原宏樹>
【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。
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