◆JERA セ・リーグ 阪神1―2巨人(27日・甲子園)
巨人・岸田行倫捕手(28)が同点の9回、決勝の左前打を放った。甲斐が加入し今季、出場機会が限られる中、阿部慎之助監督(46)の起用に応え、開幕からの阪神戦連敗を5で止めた。
全員の思いが詰まった白球は甲子園の黒土に鋭く転がった。前進守備の三遊間をゴロが抜けた瞬間、長いトンネルの先に光が差し込んだ。1―1の9回1死三塁、代打・岸田が値千金の決勝左前打。ガッツポーズするヒーローに向け、阿部監督は拍手を送り「チームを勇気づけてくれた」とたたえた。
攻めダルマと化した。先頭キャベッジが二塁打、萩尾がバントで送って8番・門脇。「ここで勝負かけるって決めていた。その後も長野も用意したし、ここで点を取れなかったら…っていうので勝負をかけた」。まず今季7打数1安打だった岸田を代打で送り、続く9番・佐々木の打順では経験豊富な長野を待機させた。
捕手はここまでFA加入の甲斐が全試合スタメン。出場機会が少ない中でも、常に明るく前向きに取り組む岸田を信じて託した。「代打って難しい。その中でヒットを打つって素晴らしい。試合に出たくて、たぶんウズウズしていると思う。そういうのが、ああいう結果につながってくれてうれしい」。起用が的中した。
初回、阪神に1点先取された。今季先行されると2勝9敗1分けの負のデータもよぎった。それでも3回に吉川の二ゴロの間に泥臭く同点。堀田は5回1失点で6回から継投に入った。
グリフィンがコンディション不良のため直前で先発回避し、ブルペンデーとなった20日のヤクルト戦(神宮)。来日初先発のケラーは2ランを浴び1回2失点だった。試合後、阿部監督はケラーを呼び、慣れない役割での起用を謝罪した。「急な先発だし、全く気にしなくていい。悔しいだろうけど、こっちも申し訳ないと思っている。またリリーフで頑張ってくれ」。ブルペン陣も一丸となって白星を呼び込んだ。
この日は阪神OB吉田義男さんの追悼試合。阪神ナインは全員、背番号「23」で臨んだ。「素晴らしい功績を残された方。
球団77年ぶりの阪神戦開幕から5戦5敗。この日負ければ6戦6敗、88年ぶりの屈辱だった。「本当、総力戦。向こうも必死でしたし、うちも必死。素晴らしい勝ち方だった。まずは1個やり返せただけ。まだこれから先長いし、一つずつ返していきたい」。執念の逆転勝ちで今季の阪神戦6度目の正直で初白星。苦しみながら重い扉をこじ開けた。