巨人のライバルだった名選手の連続インタビュー「巨人が恐れた男たち」。第4回は強打の捕手として阪神、西武で通算474本塁打を放った希代のホームラン・アーティスト、田淵幸一さん(78)が登場。

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 ミスターの器の大きさに感服していた田淵さん。いくつか笑い話がある。阪神時代の、とある試合。「長嶋さんが江夏豊に2つか3つ三振を食らった。最後の打席で、(捕手の田淵さんから)江夏がえらい遠く見えるからおかしいな?と思ったら、長嶋さんがバッターボックスのラインを消して、後ろのオレのところまで来てるのよ」。少しでも長くボールを見極めようというミスター流の“作戦”だった。「『長嶋さん、(ボックスから)出てますよ』って言ったら『ごめんごめん』。これで終わりだった」

 こんな逸話もある。打席で構えた長嶋さんと、捕手の田淵さんの目が合った。

 「長嶋さん、キャッチャーを見ちゃいけませんよ」

 「いや田淵君、僕は左目で投手を見て、右目で捕手を見るんだ」

 殺気立つ戦いの裏にあった、必死さゆえの?駆け引きだった。「カメレオンじゃないのに(笑)。平気でそういう言葉が出てくる。

長嶋さんはすごい人だよ」

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