◆JERA セ・リーグ 巨人4×―3広島=延長12回=(29日・東京ドーム)

 巨人が延長12回、甲斐拓也捕手(32)のプロ初劇打となるサヨナラ犠飛で、広島戦今季初勝利。ゴールデンウィーク9連戦の初戦に勝って2位に浮上した。

1点を追う9回、相手の失策で追いつくと、延長11回から大勢投手(25)が今季初、プロ通算5度目のイニングまたぎで2回0封。劇勝に貢献し、チームトップタイ3勝目をマークした。広島に開幕4戦全敗なら球団初の屈辱だったが、驚異的な粘りで阻止した。

 大勢は指揮官の思いを胸に、右腕に力を込めて振り抜いた。延長12回2死から菊池に左前安打を浴びたが、最後は矢野を直球で二ゴロ。ホッとした表情で笑みをこぼした。ベンチでは阿部監督と笑顔でグータッチ。今季初の回またぎで2回33球1安打無失点。3時間53分の総力戦の末に舞い込んできた今季3勝目に「9連戦の頭で投手をいっぱい使って、それほど試合にかけてるチームの思いが詰まっていた。一人一人が理解して投げた結果が勝利につながったと思う」と喜んだ。

 絶対に負けられない9連戦初戦。右腕は延長11回に7番手でマウンドへ。

最速158キロを計測する直球などで圧巻の3者連続K。ベンチに戻ると、阿部監督に回またぎを言い渡された。「もちろんです!」と即答し、12回のマウンドに上がった。「監督がそういう采配をされてることはこの試合にかけているんだなって思った」

 1点を追う9回1死、船迫の代打・岸田が四球で出塁。2死一塁、若林がフルカウントから3球ファウルで粘った後、三ゴロを小園が一塁悪送球した。白球がファウルゾーンを転々とする間に、スタートしていた代走の増田大が全力疾走で生還した。敗戦目前から追いついて突入した延長戦では気迫のプレーで流れをつかんだ。12回無死、末包の飛球を中堅・増田大が前進ダイビングキャッチ。3タテを食らった相手に雪辱すべく、誰もが必死だった。

 大勢の回またぎは昨年9月27日の中日戦以来だが、2回を投げきったのは23年6月3日の日本ハム戦以来。「2回目はもうちょっとかっこいい姿を見せたかった。球がべろべろだった。

6者連続三振狙ってたんですけど」と笑いながらも最後は気合で封じた。これでリリーフながら山崎に並ぶチームトップの3勝目。「僕が先発陣を引っ張っていく気持ちで。明日はライバルの伊織さんが4勝目をかけて投げるので裏で応援しながら切磋琢磨(せっさたくま)してやっていきたい」と笑った。

 岸田前首相が観戦に訪れていたことを伝え聞くと「あいさつに行った方が良かったですか?」と笑いを誘った。普段は冗談ばかり飛び出すが、チームのことを第一に考える熱い男だ。那覇キャンプ中に指揮官から正式に7、8回での起用を言い渡された。「監督に大切なことは話していただいて意図も聞いた。ライデルにまわせば勝つ確率が上がる」。新人時代から担った守護神の座に、特別な思いはある。それでもチームのためにできることは何か考えてきた。

 ただ守護神の座を諦めたわけではない。

「最後まで9回を投げないかと言われると違うと思う。いつでも9回を投げられる準備はします」。どんな場所でも気持ちは同じ。全てはチームの勝利のためだ。お立ち台では「ジャイアンツファンの皆さんのゴールデンウィークに、花を添えられるようにしっかりと仕事をしたいなと思います」と叫び、歓声を浴びた。一丸となって手にした劇勝の勢いそのままに、巨人が“黄金週間”を駆け抜ける。(水上 智恵)

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