◆米大リーグ オリオールズ4―3ヤンキース(28日、米メリーランド州ボルティモア=オリオールパーク)

 オリオールズの菅野智之投手(35)が、ヤンキース戦で渡米後最多の8奪三振、5回無失点で3勝目(1敗)を挙げた。3試合ぶりの四球など2四死球ながら、前回登板から11イニング連続無失点。

防御率は3・00となった。メジャー1年目の4月を終了し、6先発で3勝1敗。ア・リーグ東地区首位のヤ軍との今季初対戦を白星で飾り、チームの連敗を「3」で止めた。

 菅野は帽子を取って感謝を示した。5回2死一塁、4番・ゴールドシュミットが中堅へ大飛球を放った。あわや本塁打という当たりを、ムリンスがフェンス際で好捕。マウンドを降りかけていた右腕は頭上で拍手を6回。「あれが入っていたら、多分、勝ててない。それだけ、大きかった」と胸をなで下ろした。

 連敗ストップの任務を果たした。「カードの頭を取ることはすごく大事なこと。日本の時もすごく意識していた」。

最も多くの空振りを奪ったのはスプリットだったが、自身の分析は違うところにあった。「今日良かったなと思うのは、スプリットにいくまでの過程。直球を見せていかないと、いいところから落としても打者が反応してくれない」

 狙い通りだったのがジャッジとの第3打席だった。2打席連続で安打を許したが、カウント2―2からの5球目に151キロの直球でファウル。6球目のスプリットで8つ目の三振を奪ってやり返した。現地実況はあえて日本語で「サンシーン!」と絶叫するほどの盛り上がりだった。

 初回は制球が乱れ2四死球。2回が始まる前、左足をつく場所を整備してもらい、安定感を取り戻した。「ちょっとぬかるんでいて、気になっていた。乾いた砂が水分を吸ってくれた」。オープン戦ではスパイクに土がこびりついて苦しんだという。「あれからずっと、ベンチ裏にスパイクの土を取るやつを置いて、こまめにやっている」

 オープン戦で5失点した強力ヤ軍打線を封じ、チームトップの3勝目。

「同じ相手にやられないというのは常に心がけてやっている。ただじゃ終わらなかったというのは良かった」とうなずいた。首脳陣の信頼も高く、先発ローテの柱となりつつある。「頼ってもらえるのはうれしい。それだけにやっぱり責任もある」。自覚を持って、前へ進む。

走者出してもベテランらしい粘り

 菅野の勝因は「粘り」だろう。2回以外走者を出しながらも、「ホームにかえさなければいいんでしょ?」「長打を打たれなきゃいいんでしょ?」というベテランらしさが出た。

 いろんなボールのクオリティーが高いことが菅野の長所。試合中にどの球種がいいかを判断してゲームメイクできる。試合前までスプリットの被打率は悪かったけど、「使える」と分かったからこそだろう。直球は高め、変化球は低めを徹底。

「アメリカではこのスタイルだよね」という投球だった。

 一方で、すごく慎重に投げていた。ヤンキース打線の怖さを知っているからこそで、長打を警戒していた。2球で追い込めるところで3球使うなど、1人の打者に対して1、2球は多く使っていた印象で、5回95球を要した。

 もちろん、無失点で勝利もついたのは良かったけど、今後は慎重かつ大胆にいってほしい。メジャーでの先発の評価は日本とは違う。平均5イニングで10勝よりも、6、7回投げて、勝ちがつかなくてもクオリティースタート(6回以上自責3以下)の多さが求められる。同じく評価の対象となる登板数、イニング数を増やすために「大胆さ」で球数を減らすことも必要だ。(野球評論家・髙橋尚成)

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