◆明治安田J1リーグ▽第15節 東京V2―0横浜FC(6日・味の素スタジアム)
【東京V担当・後藤亮太】東京Vがホームで横浜FCに2―0で勝利した。
前半のFW染野の先制点、後半アディショナルタイム1分のFW熊取谷一星のプロ初得点となる2点目が勝利を呼び込んだのは間違いないが、この試合の勝利の立役者とも言えるのは、今季リーグ戦初先発で後半終了間際まで3バックの中央、最後は左ウィングバックで無失点勝利を支えたDF深沢大輝だろう。
前節の浦和戦(0●2)でDF千田が負傷し、DF谷口が一発退場。負傷で離脱しているDF林を含めて主力DF3人を欠く緊急事態に「今日やらなくていつやるんだという気持ちで入りました」と覚悟を決めてピッチに立っていた。
公式戦では初の3バックの中央だったが、前半4分の最初のプレーで流れを引き寄せたように思う。相手1トップは身長183センチのFWルキアンで、身長174センチの深沢とは9センチ差あったが、前半4分の浮き球に対しての最初のマッチアップでは、深沢が相手より先に飛んでボールをクリアし、飛ばずに収めようとした相手を上回った。この場面について、深沢は「もちろんルキアン選手が強いのは知っていました。でも分析(コーチ)の山本大貴くんから、強いけど、あんまり飛んでこないと。そこの駆け引きであったりとかは自分は結構得意。確かに入りの所でその駆け引きで勝てて、自分の良さが出たのはよかった」。その直後には相手のロングボールに対してルキアンより前に出てヘディングでクリア。立ち合いを制したことが、身長差を全く感じさせない、その後のプレーにつながったようにも思う。
その後、対人の強さだけではなく、カバーリング、出足の早いパスカット、ラインの統率も身ぶり手ぶりで示してリーダーシップも発揮するなど、試合を通して安定感は抜群だった。東京Vの下部組織から中央大を経て、東京Vに“帰還”し、チームへの思いは人一倍強い男。
その姿勢を見ているからこそ、城福監督は「今回出られないメンバーが決まった時から、もう彼しかないというふうに思っていたので、本当に期待に応えてくれたと思いますし、彼の期する思いというのはチーム全員に伝播したんじゃないかなと思います」と賛辞を惜しまなかった。
この日は今季初先発のMF稲見、開幕戦以来の先発だったFW松橋も存在感を示し、「日本一のトレーニング」で日々競争を続け、誰かに頼ることなく、誰が出ても戦えるチームの良さを体現した。緊急事態とも思える状況で代わって出番を得た選手が活躍するというのは何よりもチーム力を高める。深沢の覚悟の詰まった90分間が、チームをさらに上へと押し上げた。