◆第86回オークス・G1(5月25日、東京・芝2400メートル)=5月20日、栗東トレセン
第86回オークス・G1(25日、東京)に、千田輝彦調教師(55)=栗東=がパラディレーヌとタガノアビーを送り出す。開業15年目、まだG1を勝ったことがないが、今回初めて2頭出しで大舞台に挑む。
開業15年目の千田調教師が、さまざまな思いを胸に初めてG1に2頭を送り込む。全4戦で馬券圏内と底を見せていないパラディレーヌは「お母さんは短距離馬だったけど、体形や普段の息遣い、しぐさ、乗った騎手の話からも距離は問題ない」と一気の3ハロン延長にも愛馬を信頼する。連闘で1勝クラスを勝って挑むタガノアビーは「つらいローテを組んじゃったけど、よく勝ってくれた。体もすぐに戻って元気。前走も上がり33秒3だからね」と展開次第でチャンスをうかがう。
今回で10度目のG1挑戦。22年菊花賞6着(ヤマニンゼスト)が最高成績だが、厩舎は23年に初めて年間20勝を超え(26勝)、昨年は21勝、今年も9勝と通算216勝(20日現在)をマーク。近年の好調についてたずねると「お馬さんが頑張ってくれてます。あとは竹之下がウチに来てから、(自分が)調教に乗らなくなったのがいいんじゃないかな」と冗談まじりに話し、23年5月に騎手を引退した竹之下智昭助手(45)が、スタッフの一員として軌道に乗ってきたことも要因に挙げる。
88年に栗東・伊藤雄二厩舎から騎手デビュー。師匠のつながりで藤沢和雄元調教師とも話す機会が多かった。
調教師を続けるにあたり、忘れられない出来事がある。同期で若手のホープだった岡潤一郎さんが93年、レース中の落馬で24歳という若さで亡くなった。今でも命日の前後で京都競馬場に行くと、事故のあった4コーナーを向いて手を合わせ、可能な限り岡さんの家族が住む北海道・様似町にも足を運んでいる。「親友と言ってくれてました。岡が騎手としてG1(91年エリザベス女王杯、リンデンリリー)を勝ったので、自分は調教師でとりたい。岡がG1を1勝でしたから、その先の景色を見せてやりたいです」。まずは今週末に大仕事をして、天国の親友に最高の報告をしてみせる。(玉木 宏征)
◆千田 輝彦(ちだ・てるひこ)1969年8月23日、神奈川県生まれ。