時代はヒーローを求めていた。昭和元年から80年目の05年。
競馬界にもヒーローが誕生した。ディープインパクトだ。父に日本の競馬史を変えたサンデーサイレンスを持ち、デビュー戦から馬上には武豊。デビュー3連勝で迎えた皐月賞は発馬で大きくつまずきながらも、最後は手綱を緩められた状態で2馬身半差の圧勝だった。「この馬に出会えて本当によかった」とはレース後の武豊。最上級の賛辞からもスケール感が伝わった。
そして迎えた競馬の祭典。単勝の支持率はダービー史上最高の73・4%まで上がり、払戻金は同じく史上最も安い110円まで下がった。異常とも言える状況に圧倒的な強さで応える。
当時36歳。武豊は「今、感動してます」と喜びを口にした。その後も秋には菊花賞で史上2頭目の無敗3冠を達成するなど競馬界の最強馬に君臨し続け、まだ4歳だったラストランの翌06年有馬記念までG17勝。その強さはDNAとして受け継がれ、祭典の親子制覇は断トツの7例にもなる。
なかでも唯一、武豊によって達成されたのが13年のキズナだ。今年はその子供のサトノシャイニングで史上初の親子3代制覇を目指す。昭和100年になる大きな節目の年。レジェンドには歴史を塗り替える偉業達成がよく似合う。(山本 武志)