◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
元横綱・朝青龍。私が人生で最後に「殺すぞ」と言われた相手だ。
民主党への政権交代が世間をにぎわせた当時は、スポーツ現場の雰囲気も今と違った。ある甲子園常連校の試合では、ベンチから聞こえるヤジが度を越えていた。指導者が容認していたのだろうか。長く指揮した監督は後年、暴行問題が表沙汰になって辞任した。
時の流れに取り残される人もいれば、アップデートする人もいる。今年1月、44歳になった元朝青龍が来日。
あの日以来「殺すぞ」とすごまれたことはない。横綱昇進の抱負を述べた豊昇龍の一言が心に残っている。「てっぺんよりもっと上のてっぺんを目指したい」。言葉を扱う仕事に就く者として、ハートを優しく射抜く「殺し文句」に出会えるのを楽しみにしたい。言いたいことも言えない世の中は、ちょっと寂しいから。(レイアウト担当・堀北禎仁)
◆堀北 禎仁(ほりきた・よしきみ) 2008年入社。紙面レイアウトの傍ら両国周辺の街ネタを取材。