◆第92回日本ダービー・G1(6月1日、東京競馬場・芝2400メートル)

 運命の舞台に帰ってきた。皐月賞馬ミュージアムマイルの調整役を務める友道優一助手。

父は、ダービーで現役最多の3勝を挙げている康夫調教師だ。「人生を変えてもらったレース。出られるのはすごく光栄なこと」

 16年のダービー当日、当時大学生だった友道助手の姿は東京競馬場にあった。勝ったのはマカヒキ。父がダービートレーナーになった瞬間に立ち会った。「そういう世界もあるんだ。競馬の道に進んでみようかな」。感動の渦に巻き込まれながら、夢への扉を開けた。

 中高生時代は乗馬に打ち込んだが、大学では明確な夢がなかった。助け舟を出したのは父。「進路を決めかねてるときに、親父が『暇してるなら(ノーザンファーム)しがらきに行ってみたら?』って」。牧場に通い、競馬の魅力にひかれ始めた矢先に父がダービーV。

「流れが良かったです」。導かれたような分岐点だった。

 普段、親子で競馬談議を深く交わすことはない。それでも、父の“ダービー愛”は確かに感じ取る。「マカヒキが勝った後から、『ダービーは違う』って言い出して。一番近い存在の人が、そう言ってる」。今年、友道厩舎はショウヘイで参戦。頂上決戦で親子対決が実現する。

 ミュージアムマイルが勝てば、20年コントレイル以来の2冠。「うれしさもあるし、期待を背負ってるのも分かってる。何とか頑張りたいという気持ちが強い」。ダービーが、再び人生を変える日になる。

(水納 愛美)

 ◆友道 優一(ともみち・ゆういち)1996年2月13日、滋賀県生まれ。29歳。大学在学中からイギリス、アイルランドで研修し、卒業後はノーザンファーム空港、同天栄、白井牧場などで勤務。父・康夫調教師が管理したマカヒキ、ドウデュースの凱旋門賞遠征にも帯同した。23年1月から栗東・高柳大厩舎に加入し、攻め専(主に調教を担当する助手)を務める。

 ミュージアムマイルを担当する嘉堂助手は「(ダービーに)皐月賞馬で出るって、なかなかないこと。すごい」と重みをかみしめる。高柳大厩舎には開業スタッフとして加入。オープン馬を手がけたことはあったが、今年の皐月賞がオープンでの初勝利だった。

 「細いけど、いい馬やな」。体のバランスが良く、フットワークも伸びやか。第一印象から、光る素質を感じていた。

新馬戦は自身が北海道滞在中。未勝利Vは、別の担当馬の出走と重なり、レースに立ち会ったのは黄菊賞が初めて。3馬身差で快勝した姿に、「ダービー行けるんちゃうか」と、クラシックを意識した。

 1冠目の勝利は「信じられへん感じと、うれしさがすごかった」。実感が湧いたのは家に帰ってから、というほど現実味がなかった。さらに大きな舞台で2冠へ。「状態が落ちた感じはありません。期待はでかいです」。今度は主役として、堂々と臨む。(水納 愛美)

 ◆嘉堂 祐也(かどう・ゆうや)1986年9月8日、滋賀県生まれ。38歳。父は元騎手で、障害の名手として知られる信雄さん。

高校で馬術部に入り、卒業後牧場に就職。一度退職した後、信楽牧場で5年間勤務し、競馬学校に入学した。栗東・佐藤正雄厩舎でキャリアをスタートし、18年の定年解散に伴い高柳大厩舎へ。

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