ラグビー・リーグワンが4季目を終えた。BL東京が、初の2連覇を達成して閉幕。

リーグの東海林一専務理事によると、今季の総観客数は昨季(114万2294人)から微増の118万7470人。試合数が増えたことで全体数は増加したが、1試合あたりの集客は前年比で約8割。競技力の向上に反比例して、集客面では苦戦を強いられた。

 ラグビー競技において、課題の一つとして上がるのがホームスタジアムの問題だ。自前のスタジアムを保持するチームは、ないに等しい。その中、今季チームを運営するゼネラルマネジャーとして新たな一歩を踏み出したのが、準優勝した東京ベイの前川泰慶GM(39)。2016年に現役引退後、採用担当などを歴任して今季からGMに就任。チームのトップとしては若い39歳。ホームエリアの江戸川区を中心とする拠点を「ラグビータウン」とする、大きな挑戦に駆け出している。

 スカウト担当時は、22年の新人王・WTB根塚洸雅などをチームに呼び込み敏腕を振るった。昨季、チームの石川充前GMから2度目という打診を受け「引退して9年、責任ある立場を任せてもらい、投資をしてもらった。応えないといけない」とGM就任を決意。

掲げたのは「日本代表に5人以上輩出できるチーム」「連覇ができるチーム」という目標。目先は現場の強化。そして両輪で、大きなプランを掲げた。

 5年以内に、ホームスタジアム「スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)」を改修する。現在、収容は約5000人。会場が小規模な上、警備や運営スタッフの避暑室・控え場所は、ホームゲームの度に場所を設営しないといけない。電光掲示板を設置するだけで、約500万円の出費。集客の上限があり、チケット収入は見込めず。ホーム戦は「毎試合、1500万円の赤字が決まっている」。理想は、1万5000人収容の総合型スタジアム。前川GMは「地域の方に必要な施設にして、そこに人が集まる仕組みを作りたい」と、自治体との交渉に汗を流している。

 今季、えどりくの平均観客数は収容の約8割を占める4001人。

前川GMは「毎週、8000人以上は来てもらえるポテンシャルはある」と力を込める。都内の秩父宮ラグビー場でホーム戦を開催すれば、1万人を超えることも珍しくはない。チケット単価は平均、3000円。ホームゲームで5000人の増客が見込めれば、1500万円はまかなえる計算だ。チームとして、江戸川区長をホーム戦の度に招待。「キャパシティの大きな会場が必要なんです」と、訴えている。

 自チームのホームスタジアムを構えることの意義。前川GMは「人が集まるような仕組みを作っていけば、(最寄り)駅前のにぎわいも出てくると思う。チームの将来も明るくなるんじゃないかと思うんです」と、熱を込める。「東京23区内で、自分たちでスタジアムを持とうとするのはやはりハードルが高い。でもやりがいがあるし、価値があることだと思う」。GM就任時「10年はやらせてください」と、意思を伝えた。

覚悟を持って現職に就いた。

 今季、2季ぶりに決勝に進んだチーム。前川GMが言う「毎年、優勝が狙えるチーム」の可能性は示した。自身はGMとして、チームのPRや営業、そしてリーグとの会議への出席など、多忙を極める。その中で掲げる、ホームスタジアムの建設。「石川さんは、(新しい)スタジアムも自分の銅像を建ててやめる、というのを言っているんです。早く、やってください、って(笑)」。採用担当時は、自ら足を運び、目で見て選手に声をかけていた。情熱は、グラウンド上からチームの未来へ。“ルーキーGM”は前に進み続ける。(大谷 翔太)

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