◆明治安田 J1リーグ▽第19節 C大阪4―2清水(1日・ヨドコウ桜スタジアム)
【関西サッカー担当・森口登生】この日のヨドコウには、愛があふれかえっていた。
「一生忘れることない日ですし、もう試合前から試合中、試合終わってまでずっともう僕の応援歌を歌ってもらって、本当に改めてこのチームで良かったなって思えた瞬間ですし、幸せな1日でした」(北野)
短くも、この言葉に詰まっている気がする。
この日も頼もしすぎたFWラファエルハットン。後半9分に奪った今季8ゴール目、壮行の思いをこめて決めきった。「シーズンはじめから彼は欧州に行きたいと私に言っていた。日々の練習から見ていると、そういう意識でやっているのだなと。
20歳の若さでリーダーシップグループに据え、「若い選手ながら責任感を与えて、オンザピッチ、オフザピッチのところで成長させる狙いがあった」と話したアーサー・パパス監督の期待に応えるように、一気に夢の海外挑戦まで駆け上がったワンダーボーイ。取材しはじめてからの月日は長くないが、どこまでも「ナチュラル」でナイスガイという印象だ。対戦相手に対して強気な発言あり、「時間ある時は(YouTubeの)『がーどまん』とか『レイクレ』とか見てます」などと自身のことをぶっちゃける時もあり。2日の空港でも、渡欧に向けての必需品を聞くと「服くらいあればいいかな」と即答。
練習後の取材では試合後の場内一周では、スタンド最前列に座っていた子どもに自らが着用していたユニホームをプレゼント。「元々約束していた子? 下部組織に関係している子?」と記者同士でも憶測が飛び交ったが、真相はどれも違った。「いや、全然知らない子で。紙書いてくれてて。最初セレモニーのことで頭いっぱいで、全然分からんくて(笑)。ほんならジンさん(ジンヒョン)が教えてくれて。『ちょうだい』みたいな(紙を掲げていた)。ちっちゃくて可愛い子どもだったので」。まさに単純明快。一点のよどみもない、最後まで「ナチュラル」な男が取った行動は、受け取った少年の心に一生刻まれた瞬間だっただろう。
「セレッソがより好きになりましたし、本当に帰ってきたいクラブ。
強い覚悟を突き刺すように発せられた言葉が、耳から離れない。私もサッカー選手、そして人間「北野颯太」に魅せられた一人。夢を実現させていくその過程を、サポーターの皆さんとともに引き続き見届けていきたい。