昨季までの2シーズン、デンマークのブレンビーで活躍し、日本代表に1年ぶりに招集されたMF鈴木唯人(23)=フライブルク=をプロ入りに導いたJ1・清水の当時スカウトだった兵働昭弘氏(43、現・清水強化部副部長)が3日までにスポーツ報知のオンライン取材に応じ、初視察時の衝撃や努力家の素顔、代表定着への期待を語った。(取材・構成=岩原 正幸)

 兵働氏は2018年限りで現役を引退し、19年からスカウトに転身。

1年目で名門・市船橋高(千葉)の鈴木唯を視察した時の衝撃は、今でも鮮明に覚えている。春のプレミアリーグ初戦、背番号10のプレーに目を奪われた。

 「攻撃も守備も全部一人でやっちゃう。ボールを持ったら2人、3人かわして好機をつくり、守備も献身的。一人だけ相当目立っていて、ずっとこの選手を追いたいなと。当時から芯の強い選手だと感じた。(ピッチで)考えていることをパッと答えたりとか」

 その後、清水への練習参加を経て加入内定となった。高卒でプロ1年目の20年は、コロナ禍の中断期間を機にチーム内で頭角を表した。7月のデビュー以降、リーグ30試合に出場した。

 「1年目は惜しいところまで行くけど、数字をつけられなかった(無得点)。最後のところで力が入っている雰囲気があり、そういう話もした。本人は夜に寮で筋トレをやったり、見えないところで努力していた。

やるべきことを整理して、やれている選手だなと」

 2年目(21年)に2得点、3年目(22年)に3得点とチームに欠かせない存在となり、22年1月にはA代表に初招集された。

 「2年目途中から一歩抜けた感じがあり、3年目は特に。(代表に呼ばれ)より海外に行きたいんだろうなと思った。刺激を受けて自信を得たと思うし、クラブでの責任感も芽生えた。ここ(清水)で活躍して海外でやるという気持ちが高まったと思う」

 23年前半のフランス・ストラスブールでの期間を挟み、同年夏にはデンマークリーグに挑戦し、2年間で21得点と活躍。今年5月にブンデスリーガのフライブルクへ完全移籍とステップアップを実現した。

 「アジリティー(俊敏さ)、スピード、ドリブルのキレなど(大柄な選手たちの中で)非常に合っている。意外とパワーでも負けない。海外の選手に当たられても簡単に倒れず、力強さも身についた印象がある」

 森保ジャパンでは1年後に控える26年北中米W杯本大会メンバー入りへ生き残りをかけた戦いが始まる。兵働氏は自身のスカウト活動初年度に巡り会った逸材に感謝するとともに、今後へエールを送った。

 「プレーもそうだし、人間的にも愛される選手なので、1年目から一緒に仕事ができたのは本当に幸せなこと。(代表で)生きるのはシャドーの位置だと思う。

個でも行けるし、グループで連係して崩したり。守備でも貢献できる。(豪州、インドネシアの2戦は)なかなか呼ばれていない選手には非常に重要になるので、唯人らしく活躍してアピールしてもらえたら」

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