34年ぶりに東京で開催される陸上の世界選手権開幕(9月3日)まで5日で、あと100日と迫った。男子3000メートル障害の日本記録保持者で昨年のパリ五輪8位入賞の三浦龍司(23)=スバル=が、スポーツ報知の単独取材に応じ、競技の魅力や東京世界陸上での目標を語った。
熱い思いで東京世界陸上シーズンを迎えた。三浦は今年9月の大一番へ「メダル獲得。記録も更新したい」と男子3000メートル障害の第一人者として、高らかに目標を掲げた。4月の同種目の今季初戦から8分10秒11をマークし、世界陸上の参加標準記録(8分15秒00)を突破。早々に3大会連続の代表入りを決めた。「入賞では(これまでの五輪や世陸と)平行線。成長した姿を見せたい」と闘志を燃やした。
1周4つの障害と1つの水濠を越える特殊種目、通称“サンショー”。3000メートルを走る中で高さ91・4センチの障害物は28回、長さが3・66メートルで最深部が70センチの水濠(ごう)は7回越える過酷な種目だ。三浦は高校時代から取り組む種目だが、小学生の頃から存在自体は知っていた。
ただ、種目適性がドンピシャだった。上半身がぶれないバネのある走りや、大きなストライドが三浦の武器。小学1年から通った地元クラブのコーチに勧められ、京都・洛南高から挑戦すると、すぐさま頭角を現した。最初に障害を跳んだ時は「めちゃめちゃ怖かった」というが、「ジャンプ動作は得意。競技を楽しめると思った」と、ドはまり。3年時に高校記録(当時)をマークすると、順大2年時には東京五輪予選で日本記録(当時)を樹立。コロナ禍で無観客の中、決勝は同種目日本人初の7位入賞を果たした。
三浦はスパート力も強みだ。レース終盤、自身のタイミングでギアチェンジすると、障害物に足をかけない跳び方に変更する。「勝負の駆け引き。スピードを殺さない走り方を求めた中であのハードリングになる」と一気に突き放すスタイルを追究。
日本の3000メートル障害を大きく成長させた23歳は、競技のさらなる発展も願う。「(同種目は)人を選ぶイメージがあるかもしれないですが、どんな形で適性が見られるかわからない。どんどんチャレンジしてほしい」。満員の東京・国立競技場で、サンショーのファンをさらに増やす快走を披露する。
◆三浦の今季の3000メートル障害 世界最高峰のダイヤモンドリーグ(DL)第1戦(4月26日、中国)で初戦を迎え、8分10秒11をマークして日本陸連の選考基準を満たし、代表に内定。DL第2戦(5月3日、中国)は右脚違和感のために直前に棄権も、セイコー・ゴールデングランプリ(5月18日、東京・国立競技場)は8分18秒96で貫禄勝ちし「戻ってきている手応えを感じた」と復調。DL第4戦(5月25日、モロッコ)は8分13秒39をマークした。
◆三浦 龍司(みうら・りゅうじ)2002年2月11日、島根・浜田市生まれ。23歳。陸上は小学1年から。
◆三浦龍司「サンショー」ガイド
◇スタート 1回目の水濠は跳ばず通常のトラックを走り、第3、4障害は通過後に設置される
◇障害物 僕も最初は怖かった。最初のレースに臨むまで、何回か障害を越えるデモンストレーションの練習みたいなこともしました
◇障害物の跳び方 足をかけるかかけないかは、体格によって違う部分もあります。高身長な選手は、足をかけてロスにもなることもあると思います
◇水濠 レース中に障害のある位置を認識して自分の置きたい足の位置で跳ぶのはなかなか難しい。理想のポジションを確保することは、水濠の難しさと醍醐味でもあります
◇初レースの思い出 最初のレースは(ペースが)遅いって思うくらい慎重に入った方が良い。僕は初めての時、残り2000メートルもある状況で足がパンパン、上半身にも疲労感が出てきました。もう動かせないって思いながら走った。
◆世界トップ選手 五輪は21年、24年、世陸は22年、23年金と圧倒的な強さを誇るスフィアン・エルバカリ(モロッコ)、世界記録(7分52秒11)保持者のラメチャ・ギルマ(エチオピア)が世界トップツーに君臨。共に190センチ越えの高身長を生かしてまたぐように障害を越える。昨年のパリ五輪銀メダルのケネス・ルークス(米国)、同銅メダルのエーブラハム・キビウォット(ケニア)も勢いがある。