サッカーのイングランド・チャンピオンシップ(2部相当)のリーズを世界最高峰プレミアリーグ昇格に導いた日本代表MF田中碧(26)が、スポーツ報知の単独インタビューに応じた。加入1年目で43戦5得点と主軸として活躍し、2部優勝。
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リーズは3季ぶりにプレミア復帰を果たした。5月5日。リーズ市中心部で行われたパレードには約15万人ものファンが集結し、田中も歓喜に酔いしれた。
「5年前(2020年)に、17シーズンぶりにビエルサ(監督)がプレミアに昇格させた時、サポーターがコロナ禍でいなかった。今回はサポーターと一緒に喜べるのがうれしくて、パレードに15万人が集まってすごかった。クラブが破算して(07年に)3部まで落ちてから、みんなプレミアで欧州CLを争うところまで行きたいから、ファンはめっちゃアツい。大変なのはここからです」
加入1年目の田中はベストイレブン、クラブMVP、ファン投票の年間最優秀ゴール賞と個人“3冠”に選出。自身初の欧州1部行きを勝ち取った。
「昇格することだけのために来たので、自分が求めていたものという意味では100点かな。けがせずにやり続けられたのは、個人的には素晴らしかったと思うし、自信にもなった。
来季は世界最高峰のプレミアリーグに初挑戦する。
「できる限り長くプレーしたい。38試合に全てスタメンで出ることはあまり考えてない。あの(三笘)薫さんでさえ、あれだけ結果を残していてもスタメンを何試合か代えられる。でも、そういうリーグ。スタメンとサブじゃなくて、スタメン級が同じポジションに何人もいる。自分が出るポジションで、最終的に(スタメンを)勝ち取って試合に出続けて、なおかつチームがいい順位にいるのが一番価値がある」
同じ川崎市出身で、小学生時代からチームメートだった1学年上のMF三笘薫(ブライトン)と同じ舞台に立つ。
「俺も楽しみです。それ以上にプレミアがすごすぎる。薫さんが19分の1(チーム)じゃなくて、全チームがすごい。全試合がW杯みたいな、すごい選手やチームばかり。それがプレミアのすごさだし、毎試合が楽しみ」
今季はリーズで過密日程を戦いつつ、日本代表の活動に長距離移動を伴いながら参加し、W杯最終予選を戦った。
「代表に行くのはリフレッシュになるし、一回、リーグを忘れられる。でも、その分、反動で疲労はたまる。そのタフさはある。普通は(代表に行かない選手は)代表ウィークにリーグ戦がないので、チャンピオンシップなら5オフ(5日間休み)や6オフとかくれる。それがなかった中でやり続けるのは、けっこう大変ではあった。でも、それが宿命だから。その中で試合に出続けることがいかに大変かは、上に行けば行くほどより感じる」
代表チームとクラブを行き来するリズムについてはこう語る。
「それはもう慣れてますね。でも、疲労は普段やってないことをやるから絶対にたまる。代表は1試合1試合で重みが違う。でも、それをするために海外に行ってる部分もある。自分の中では言い訳にはできるけど、世間的には言い訳にはならない。
22年カタールW杯は1次リーグ・スペイン戦で決勝ゴールを挙げ、チームを16強入りに導いた。来年は自身2度目のW杯出場を目指す。
「プレミアで1年頑張って、やることをやれればW杯でも活躍できると思ってる。プレミアで何ができるか次第。それは個人的にというより、チームとしての兼ね合いもある。プレミアで1年間やって成長して、(W杯)メンバーに入れればいいかなと思う」
北中米W杯まであと約1年。27歳で挑む大会は、前回とは位置づけや心持ちが違う。
「本気で優勝したいと思って挑める。最初のW杯は分からないので(先輩選手に)ついてくだけで、とりあえず出たら、やる感じだった。今はチームとして経験値がある。スタメン争いはありつつ、ターンオーバーしても力が落ちないチームにはなると思う。もちろん世界のトップと比べたらまだまだだけど、W杯優勝が見栄とかで強く言ってるだけじゃなく、自分たちにちゃんと根拠がある自信から言えるものになってきてる。
3年前。決勝トーナメント1回戦でクロアチアに敗退後、田中は「バケモンになってここに戻ってきたい」と話していた。「順調に歩んでいるか?」と問われると、即答した。
「まだ全然です。この1年次第だし、こっからです。サッカー人生なので、1年いいシーズンがあったからいいわけじゃないけど、1年いいシーズンがあることも、すごくいいことでもある。来年次第ですね」
=おわり=
◆田中 碧(たなか・あお)1998年9月10日、川崎市生まれ。26歳。さぎぬまSCから小3で川崎の下部組織に入団。2017年トップチーム昇格。19年Jリーグベストヤングプレーヤー賞(新人王)、20年ベストイレブン選出。21年6月にドイツ2部デュッセルドルフに移籍、24年8月からイングランド2部リーズ所属。