◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 練習を試合のように。そして、試合を練習のように。

スポーツでは究極のテーマと言える。それを実践したサッカー選手がいた。スペイン4部相当のアレナス・ゲチョでプレーし、今季リーグ優勝を果たした元日本代表DF丹羽大輝(39)だ。

 Jリーグでも活躍した丹羽だが、今季の試合出場は5試合。21年に35歳で果たしたスペイン移籍後、4季目で最も出番の少ない1年だった。勝手に失意のシーズンを想像していた。ところが、彼は「最高でした!」と充実感を漂わせた。

 シーズン当初、戦力外の扱いを受けた。新監督が若手起用の方針を打ち出し、チーム最年長の日本人は蚊帳の外。監督から「移籍すべき」と進言もあった。それでも「まだ自分自身のことを知ってもらっていない」と残留を決断。そこで実践したのが「毎日の練習を試合と捉える」ことだった。

 ウォーミングアップから他選手よりいい状態で入れるように、早朝、プロを目指す中学生の息子との“練習前の練習”を日課にした。翌日に向けたプールでのリカバリー、食事、全てを徹底。日々の積み重ねで苦境を覆した。シーズン終盤に出場機会をつかむと「全てをぶつけました。でも、練習と同じ感覚で」とプレーし、勝利に貢献した。

 「この年齢でまた新しい感覚に出会えた。まだまだサッカー選手に没頭したい」。本気で1年間、やり切ったからこその言葉だ。今、試合に出られなくて苦しむ若手は、丹羽から感じるものは多いはず。そして、私にも刺さる。「練習を試合のように」を「毎日の記事にこそ記者の真価を」と置き換え、日々に向かいたい。(サッカー担当・金川誉)

 ◆金川 誉(かながわ・たかし) 2005年入社。

11年から主にサッカー担当。W杯は14年から3大会連続で取材。

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