スペインでプレーする元日本代表DF丹羽大輝は、2024―2025年シーズン、アレナス・ゲチョの一員として4部相当リーグでリーグ優勝を果たした。自身の出場はわずか5試合。
スペイン・バスク地方にまだ日が高くのぼる前の早朝。サッカー漬けの一日は始まる。朝起きてすぐ、14歳の息子とのトレーニング。地元クラブでプレーする息子の希望で、スペイン移籍後に始めたルーティンだ。
「今日も戦いが始まるぞ、と。彼を見ていると、これだけ異国の地で頑張っている日本人がいるのに、おれが頑張らへんわけにはいかへんやろ、っていつも思っています」
ボールタッチなどの感覚を磨く息子とともに、今年1月に39歳となった肉体と向き合う。何か違和感はないか、どこに疲労があるのか、自身の体を知ることで負傷のリスクなども把握し、チームのトレーニングに備える。
アレナス・ゲチョはクラブ創立から100年以上の歴史を持ち、1929年にスペイン全国リーグが創設された際、Rマドリードやバルセロナとともに最初の10クラブに名を連ねた古豪。
「会長やGMから、すごく信頼をされているという感覚があり、(契約延長の)お話を受けました。新監督が決まったのは、その後ですね。監督と初めて話した時にはっきりと言われたのは、若い選手を使いたい、ということ。他の選手と同じじゃだめだ、大輝を使うためには、圧倒的なパフォーマンスを見せてくれ、と言われました。その話に、僕は納得していました。それでも違いを見せることができる、と思っていたので。わかりました、しっかりとパフォーマンスを見せますっていうことで、シーズンが始まったんです」
新監督のイバイ・ゴメス監督は35歳。現役時代はアスレティック・ビルバオなど、ラリーガで200試合以上に出場した経験も持つ若き指導者だ。一方で昨季のレギュラーに対し、その実力を見る前に「若手を使いたい」という方針をここまではっきり伝える監督は、日本では決して多くはないだろう。丹羽は覚悟を決め、シーズン前のキャンプは始まった。
「最初は両極端で考えていました。すごくポジティブに捉えれば、怪我をさせないことも含め、ベテランとして扱ってくれているのかな、と。もう一方は、戦力として考えられていないのかな、と。でも、そのうちにこれは決定的にまずいな、ということがわかりました」
コロナ下の2021年、スペインに飛び込んで4年目。海外で経験も積み、地域にも溶け込み、チームメートからの信頼も集めている自負もあった。そんな中で、サッカー人生で初めての事態に直面していくことになった。(第2回に続く)