日本陸上競技連盟は25日、都内で理事会を開き、女子マラソンで2大会連続メダリストの有森裕子氏が新会長に就任したことを発表した。女性、五輪経験者では初となる。

 有森新会長は、「マラソンを5本くらい走った方が楽です」とジョークを交えながら責任の重さを口にし、「自分が今まで感じてきたものをより生かして、スポーツ全体の社会の価値を上げたい」と所信表明した。

 会長には「人生で初めて立候補しました」といい、理由についても熱く語った。マラソンで活躍した自身の現役時代、当時は長距離と比べて「トラック&フィールドは見向きもされなかった。それでも一人一人が踏ん張っていた」とし、現在同連盟の強化委員長を務める、元男子400メートル障害の五輪代表・山崎一彦氏の名前を挙げた。「とても大変だった時代を知っている彼らが強化を担当し、本当にすばらしい選手を育てている。全部の自分の思いをつぎ込んであれだけの行動をしている姿は、ただただ応援したくなった。頑張っている彼らをすごいなって思う自分がいました。これだけ思いを持って陸上をしていた仲間が今の陸上を支えている。これは、私たちがタッグを組まないでどうするかって思いました。それが、奮起させた、一番の強さです」と時折、目に涙を浮かべながら熱く語った。

 9月には東京で世界陸上が行われる。自国開催の大一番について「まず、愛される場になって欲しい」と期待を込める。

「スポーツ、陸上が、こういう見せ方、こういう場によって、こんなに楽しく、ステキなものなんだと思ってもらいたい。そういう社会の連鎖、つなげていけるようなきっかけになると思っています」とうなずいた。

 ◇有森 裕子(ありもり・ゆうこ)1966年12月17日、岡山市生まれ。58歳。85年に就実高から日体大に入学。89年に卒業し、小出義雄監督率いるリクルートに入社。90年1月、大阪国際で2時間32分51秒の初マラソン日本記録(当時)。91年の大阪国際で2時間28分1秒の日本記録(当時)。同年の東京世界陸上で4位。92年バルセロナ五輪銀、96年アトランタ五輪銅に輝いた。2007年に現役引退。21年に日本陸連副会長に、23年には世界陸連理事にも就いた。

知的障害者が対象のスポーツ組織、スペシャルオリンピックス日本の理事長なども務め、幅広く活躍している。

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