プロボクシングの試合後、急性硬膜下血腫のため8日に死去した神足茂利(こうたり・しげとし)さん(享年28)=M・T=の兄で、松田ジムトレーナーの昌冶(まさや)さん(32)が16日、名古屋市内で開催された興行で茂利さんの逝去後初めてセコンドに復帰した。担当を務める武藤涼太(松田)が出場予定だったノンタイトル8回戦は相手の棄権により中止となったが、代替で行われたスパーリングで、セコンドとして武藤をサポート。

「僕がリングに上がっていることを何よりシゲ(茂利さん)が喜んでいると思う。シゲを慕って、シゲもかわいがっていた涼太をチャンピオンにします」と誓った。

 元アマボクサーでもある昌冶さんは「弟が亡くなって、正直ボクシングが怖くなり、ボクシングから離れることも考えた」と明かす。その上で「毎日LINEで連絡を取ったり、ボクシングがあってこそ深まった兄弟愛だった。これでボクシングを辞めたら、シゲのことを忘れるような感覚になる」とセコンド復帰を決意した。

 名古屋市出身の茂利さんは、アマ50勝(5RSC)23敗の戦績を残し、日大卒業後にM・Tジム入門。19年にプロデビューし、今月2日に行われた東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチで同級5位の挑戦者として出場した。王者・波田大和(帝拳)と引き分けた試合後、医務室で意識を失い、病院へ救急搬送。開頭手術を受けていた。同興行では、日本ライト級挑戦者決定戦で8回TKO負けし、急性硬膜下血腫で開頭手術を受けていた浦川大将(うらかわ・ひろまさ)さん(帝拳)も9日に死去(享年28)。一興行で2選手が亡くなる異例の事態となった。

 昌冶さんは今後、M・Tジムと相談の上、緊急搬送に時間が掛かり過ぎた点など、日本ボクシングコミッション(JBC)に再発防止へ向けた嘆願書を提出することを考えているという。

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