◆第61回札幌記念・G2(8月17日、札幌競馬場・芝2000メートル、稍重)

 サマー2000シリーズ第4戦、第61回札幌記念・G2は17日、札幌競馬場で行われ、10番人気のトップナイフが鋭く抜け出し、重賞初制覇を飾った。横山典弘騎手=美浦・フリー=は自身の記録を更新する57歳5か月26日でのJRA最年長重賞勝利。

20分前に行われたサマーマイルシリーズ第3戦、第73回中京記念・G3(中京)で重賞初制覇した3歳牝馬のマピュースの鞍上は、三男の横山武史騎手(26)=美浦・鈴木伸厩舎=で、横山親子初の同日重賞制覇だった。

 全身から喜びがあふれ出た。雨上がりの札幌競馬場。ターフから引き揚げるトップナイフの馬上で、横山典はスタンドへ何度も左腕を突き上げた。そして、両腕でパートナーの首筋を抱きしめる。検量室前では「やった~」と昆調教師と抱き合った。「とてもうれしいです。やっと復活してくれたのでうれしいです」。2、3歳時に重賞で2着が4回もあった素質馬とようやくつかんだ初タイトル。長いトンネルを抜けた先に最高の笑顔があった。

 57歳5か月26日で自身のJRA最年長記録を更新する重賞勝利には技術の粋が詰まっていた。道中は雨で荒れて各馬が避けた内の馬場を通り、後方からスルスルと先団へ進出。

「道中が楽にこられたので、進路さえ開けば突き抜けると思っていました」。直線手前では自信を込めた右ステッキで加速をつけ、馬と馬の間を一気に抜け出す。最後まで止まらない。1馬身差の完勝だった。

 不屈の思いが乗り移った。一昨年のこのレース2着以降、約2年も連対がなく、2度も膝蓋(しつがい)骨の手術を行った。2度目は昨秋のアンドロメダS3着後。「このまま終わらせるわけにはいかない」。強い思いを胸に愛馬と向き合った昆調教師に、横山典が告げたのは「(手術の)麻酔(の影響)が抜けるには2走いる」。名手の言葉通り、最高の結果は休養からの叩き3走目に運ばれてきた。

 3歳時から〈2〉〈6〉着だった北の大一番を三度目の正直で制した。今後は未定だが、この日、横山武と初の親子同日重賞Vにもなった横山典の視線は先を見据える。

「軌道に乗れば、これから大きなところで大きな花を咲かせられると思います」。鮮やかな復活劇は、再び頂点へ走り出す序章に過ぎない。

(山本 武志)

 トップナイフ 父デクラレーションオブウォー、母ビーウインド(父スピニングワールド)。栗東・昆貢厩舎所属の牡5歳。北海道浦河町・杵臼牧場の生産。通算成績は19戦3勝。重賞初勝利。総獲得賞金は1億9624万3000円。馬主は安原浩司氏。

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