◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 「お題はお任せ」の両国発は何を書こうか、すごく悩む。きっと私だけではない(と信じたい)。

ただ、もう3回目の出番なので、今回は素直に思っていることをテーマにしたい。「AI(人工知能)」が急速に進化する時代に、記者の存在意義とは。今年に入り、本当に考えることが増えた。

 まず、生成AIによる文章の作成は便利だが、出典元が不明確になる可能性や誤情報のリスクを抱える点が課題だ。一方で、ソースを指定できるなど、情報の信頼性が限りなく担保された生成AIが登場している現実も無視できない。この先、どう活用するかを慎重に見極めていく必要がある。

 そうなると、AIに代替できない記者の特有性は一次情報をどれだけ報じられるかに尽きる。ニュースはもちろん、取材対象者と信頼関係を構築して「私だから話してくれた」という独自性をいかに出せるか。この当たり前のことが、ますます重要になるはずだ。

 実体験として阪神のリーグ優勝の際に、藤川監督が「俺は死んだと思ってくれ」と夫人に伝えた覚悟などに触れたコラムを書き、反響に驚いた。読者、球団関係者、指揮官の恩師をはじめ、想像以上に多くの声をいただいた。どこまで踏み込んだ内容にするのか、しゅん巡はあった。

それでも署名記事に主観を盛り込み、“リアル”を追求したことで、伝わったのだと感じている。

 AI社会に何を残していけるのか。情報が簡単に手に入る今だからこそ、確度の高い情報を提供し、情報の価値を改めて高めることも大切だと思っている。偉そうなことは言えないが、その問いに向き合いながら、記者の存在意義を模索していきたい。(阪神担当・小松 真也)

 ◆小松 真也(こまつ・しんや)2018年入社。記者18年目で、阪神担当は通算4年目。

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