◆米大リーグ 地区シリーズ第1戦 フィリーズ3―5ドジャース(4日、米ペンシルベニア州フィラデルフィア=シチズンズバンクパーク)

 ドジャース・大谷翔平投手(31)が4日(日本時間5日)、歴史的白星をマークした。フィリーズとの地区シリーズ(S)第1戦に「1番・投手、DH」でポストシーズン(PS)での投手デビューを果たし、6回3安打9奪三振3失点で勝利投手になった。

PSで打順8、9番以外に投手が入り、勝利投手になるのは1918年のベーブ・ルース以来107年ぶり。最終回を佐々木朗希投手(23)が締め、日本人投手が先発勝利とセーブを挙げるのはPS史上初。快挙ずくめの白星発進となった。

 敵地の大歓声をかき消した。大谷がほえた。3点ビハインドの5回2死一、二塁。打席に本塁打王を争ったシュワバーを迎えた。フルカウントからの6球目。低めにカーブでバットに空を切らせた。「確実に行けるんじゃないかなと思って、自信を持って投げました」。三振に仕留めて危機を断ち、力強く右拳を握った。総立ちだった敵地のファンは静まった。

流れを引き戻すと打線が6回に2点、7回に3点を奪って逆転。歴史的1勝が舞い込んできた。

 米8年目でたどり着いたPS初マウンド。開始40分前にウォーミングアップでグラウンドに出ただけで痛烈なブーイングを浴びせられた。2回には無死一、二塁でリアルミュートに2点三塁打を浴びるなど3失点。だが、「先制点を取られた後に味方が反撃に出るまでしっかりと粘れば必ず勝つチャンスは来るかなとは思っていた」と立て直し、3回以降は崩れることなくシュワバーも3打数無安打2三振に封じるなど、追加点は与えなかった。6回89球で3安打9奪三振3失点。最速も101・4マイル(約163・2キロ)を計測し「緊張感はありましたけど、集中して試合に入って行けてたかなと思う。全体的に楽しめた」と笑顔を見せた。

 二刀流として実質、世紀を超えた記録を樹立した。以前はナ・リーグにDH制がなかったため、投手がPSで打席に立つことは珍しくはなかったが、PSで8、9番以外で投手がスタメン出場し、勝利投手となるのは1918年9月9日のワールドシリーズ第4戦でベーブ・ルースが「6番・投手」で先発して以来107年ぶり。5番以上に入るのは史上初だった。

 チームのために、できることは尽くした。バットでは4打席連続三振を喫したが、9回2死走者なしの5打席目には「朗希が(肩を)作り始めていたので、監督から『時間を稼いでほしい』というオーダーが出ていた」と、初球にバントの構えをするなど揺さぶって四球を選んで「いい四球だったと思う」と自賛するほどだった。

 降板が決まっていた7回に逆転弾が出たことも、大谷の粘投に打線が応えたから。T・ヘルナンデスの逆転弾では大谷もベンチを飛び出し「これこそPSの醍醐(だいご)味という、そういう瞬間だったんじゃないかなと思う」と喜びを爆発させた。

 ド軍は昨季のPSから5シリーズ連続で初戦に勝利。これまでの4シリーズはいずれも勝っており、レギュラーシーズンから8連勝と勢いに乗っている。「二刀流で世界一」へ、まずは第一関門を突破した。(安藤 宏太)

◆髙橋尚成Point  ポストシーズン初登板となった大谷。WBCの時のように、テンションを上げて投げていくのかと思っていたら、意外にもレギュラーシーズンと同じように、すごく冷静で、いつもと変わらなかった。

 特にクレバーに感じたのは強力な1~3番に対するピッチング。シュワバーには基本的に内角を攻めて空振りを奪い、同じ左でもハーパーには外の球で打ち取る組み立て。ターナーを含め、3人合わせて通算889発を誇る打線のキーマンを一度も出塁させなかったことが勝利に結びついた。

奪った9三振のうちカーブで4つ。勝負球にカーブを使うことが少ないと相手が研究していると読み、その裏をかいた投球だった。(野球評論家・髙橋 尚成)

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