◆陸上◇国民スポーツ大会(5日、滋賀・平和堂HATOスタジアム)

 成年少年男子共通400メートルリレーで静岡が38秒95の大会新&東海新で2015年以来の優勝を飾った。前日の少年男子B100メートルで優勝した3走の松下碩斗(静岡高1年)からバトンを受けたアンカーの飯塚翔太(34)=ミズノ、藤枝明誠高出=が1人抜いて歓喜のゴール。

10年ぶりとなる頂点に立った。成年男子110メートル障害では宮本皓寿(順大2年)=浜松市立高出=が7位。少年女子5000メートル競歩で堀伊吹(静岡サレジオ3年)が23分40秒46の自己新で8位入賞した。

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  ホームストレートで一気に伸びた。百戦錬磨のアンカー・飯塚が貫禄の走りだ。3走の松下から2位でバトンを受けたベテランが、渾身の力をこめて駆け抜けた。ただ1チーム、39秒を切ってゴールし、電光掲示板には38秒95の数字が映し出された。

 落ち着いていた。「抜こうとすると力が入るので、一歩一歩を意識して走りました」。準決勝では力んでスピードに乗りきれなかった点を反省。県男子の目標だった大会新での優勝を、東海新で実現させた。

 他県を寄せ付けない“完全V”だった。

3日の予選は39秒13の大会タイ記録で全体1位通過。4日の準決勝はタイムこそ落としたが、再び一番時計で決勝に駒を進めた。レース前には、飯塚がメンバーに「力を出し切ろう」と激励してトラックに入った。

 15歳の高校1年生からリオ五輪銀メダリストの34歳へのVリレーが完成した。3走の松下にとって飯塚は、雲の上の存在。陸上を始めたころに一緒に写真を撮った思い出は今でも忘れない。「陸上を始めたころからのあこがれの選手。一緒に走れるなんて思わなかった」。前日の少年男子Bで、県勢男子では2009年に飯塚が少年Aで優勝して以来となる100メートルを大会新での制覇。2日続けての大会記録更新で2冠に輝いた。

 県勢の男子リレーVは10年ぶり。飯塚にとっては5度目の同種目優勝に「めちゃうれしい」と満面の笑み。

「ここ数年は優勝Tシャツを用意してもらっていたけれど、優勝できずにそっとしまっていたのを見ていたから。スタッフの方に結果で恩返しできて良かった」。県陸上界のレジェンドが、チャンピオンTシャツに袖を通して誇らしげに笑った。(塩沢 武士)

 1走・佐藤瑠「総体後からずっと1走を想定してスタートの特訓をしてきた成果は出た。大会直前に左の太ももを痛めて個人の100メートルは欠場して、リレーにかけていた」

 2走・大石凌功「素直にうれしい。負ける気はしなかった。一度、京都(洛南高)で勝っているのでリレーの優勝は今回で2度目。この流れに乗ってあす(6日)100メートルで頑張ります」

 ▽成年少年男子共通400メートルリレー〈1〉静岡(佐藤・大石・松下・飯塚)38秒95=大会新、東海新〈2〉北海道39秒13=大会タイ〈3〉京都39秒14

 〇…成年男子110メートル障害では7位入賞にも、宮本が上位との力の差を痛感した。優勝した大学の先輩・阿部には0秒78差をつけられた。「最初から決勝で戦うことを考えている人と、決勝を目標にしている人間の差ですね」と、ポツリ。それでも、まだ大学2年生。先月27日の関東新人では自己ベストの13秒70をマークするなど確実に成長曲線は描いている。

「今季はこれで最後。冬季に筋力アップしてスタートを強化したい」。課題に取り組んで強いハードラーを目指す。

  ▽成年男子110メートル障害決勝 〈1〉阿部竜希(千葉・順大)13分26=大会新〈2〉野本周成(愛媛・愛媛競技力本部)13秒30〈3〉横地大雅(東京・Digverse)13秒60〈7〉宮本皓寿(順大)14秒04

 〇…少年女子A5000メートル競歩は、堀が自己ベスト(24分5秒83)を25秒近く更新して8位に滑り込んだ。全国高校総体では入賞にあと一歩及ばず、9位で終わった悔しさを晴らした。上位4人が大会新をマークするハイペースにも冷静だった。「離されても粘れた」。総体後から動きを変え、「指で地面をつかむ感覚を覚えて疲れにくくなった」と、うなずく。大学進学後も競技を続ける予定。「入賞で自信になりました」と笑顔を見せた。

  ▽少年女子A5000メートル競歩 〈1〉逢坂ひかり(兵庫・市西宮高)22分40秒75=大会新〈2〉内山由菜(埼玉・本庄東高)22分41秒50=大会新〈3〉石田紗也(岡山・玉野光南高)22分43秒76=大会新〈8〉堀伊吹(静岡サレジオ高)23分40秒46

 〇…成年女子100メートルは昨年、少年女子Aを制した小針陽葉(駿河台大1年)=富士市立高出=が、“連覇”へ発進した。予選3組に登場し、11秒87で1位突破。

「タイムは今ひとつ」と言いながらも「冷静には走れた」と、内容には及第点をつけた。9月下旬に香港で行われたU20東アジア選手権の200メートルでは優勝。世陸出場組もいる準決勝に向けて「(11秒)6台を出さないと、たぶん決勝は無理。世界と戦ってきた人たちに食らいついていきたい」と気持ちを切り替えていた。

 ▽成年女子100メートル予選3組 〈1〉小針陽葉(駿河台大)11秒87〈2〉竹内爽香(埼玉・渡辺パイプ)11秒87〈3〉高橋明日香(神奈川・ジーケーライン)11秒93

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