今年の1月、今村信貴投手(31)を取材するため、単独自主トレ先の鹿児島・与論島に向かった。暖かい気候、温かい島民と触れ合いながら「自分を応援してくれる人って思ったよりいるんやなって感じた。
巨人では、先発もリリーフもこなしてきた。今季はファームで41試合に登板し、4勝1敗、防御率1・91と抜群の安定感を誇っていた。確かな手応えがあった。だからこそ、もどかしかった。「体がきついシーズンとかはこれまであったけど、ここ何年かでも状態がよかっただけに、14年間で一番きつかったかもしれない。
ただ、苦しさを胸に抱えながらも、いつも淡々と練習に打ち込む姿が印象的だった。「『心が体を動かす』という言葉があるように、どうやったら1軍に上がれるんだろうって、しんどいなって思った時期もあった。ただ支えてもらっている人、応援してくれる人がいる。左右されたら負けた気がするから。自分を応援してくれている人に頑張っている姿を見せたい」。結果を残したいのはもちろんだが、見ている人々へ感謝の思いを伝えたい一心で腕を振ってきた。
「桑田さんにも評価はしてるし、諦めないで頑張ろうと常に声をかけてもらっていた。ここで腐っちゃうとそういう姿を見せることになる。後輩に限らずいろんな人が見ている。そういう姿だけは見せないようにやろうとは思っていた」。同じように1軍に上がれずにファームで耐えている後輩と連絡を取っては、励ましてきた。
14年間プレーしてきたチームとの別れを告げ、新天地での現役続行を目指す。「やっぱり、いざ言われると寂しいな…」とこれまでの日々を振り返ったが、「今年の体の調子が1番いいし、まだまだやれる。戦力外って言われた時にまだやりたいって気持ちが一番最初に出てきた」。まだまだ熱い思いは胸にある。その思いがある限り、道は開けるはずだ。