◆米大リーグ 地区シリーズ第4戦 ドジャース2x―1フィリーズ=延長11回=(9日、米カリフォルニア州ロサンゼルス=ドジャースタジアム)

 ドジャース・佐々木朗希投手(23)が、9日(日本時間10日)の地区シリーズ(S)第4戦(5回戦制)の本拠地・フィリーズ戦で3回パーフェクト救援を見せ、3勝1敗でのリーグ優勝決定S進出の立役者となった。同点の8回から、守護神としては異例の3イニングを完全投球。

延長11回サヨナラ勝ちにつなげた。ド軍は13日(同14日)からブルワーズ、カブスの勝者とリーグ優勝決定S(7回戦制)を戦い、勝てばワールドシリーズ(WS)に進む。

 本拠の5万563人が総立ちになった。東地区王者を圧倒する佐々木の姿に、ニューヒーロー誕生を確信した。何度も響く「ローキ、ローキ!」。3回を36球、パーフェクトで抑えた新守護神は、ロバーツ監督に熱いハグで出迎えられた。「ホッとした気持ち。シーズンで(活躍)できなかった分、残された期間で仕事はできている。自分らしく投げられていることに喜びを感じる」。もがき続けた日々を回想しながら、達成感をかみ締めた。

 7回2死満塁。ベッツが同点の押し出し四球を選ぶと、急きょ声がかかり、急ピッチで準備した。

「なんとかすぐにスイッチ入れて試合に臨めた」。マイナー含め8度目の救援で慣れたもの。先頭の本塁打王シュワバーを右飛に打ち取り、ハーパーを迎えると、ロサンゼルスに「ローキ」コールがこだました。

 ギアがまた一段、上がる。MVP2度のハーパーを三飛。最速100・7マイル(約162・1キロ)で3者凡退とメジャー屈指の強力打線を完全に牛耳った。救援転向後初の回またぎとなる9回も3人で抑えると、10回はクローザーとしては異例、予定外の3イニング目へ。「特に疲れもなかったので心配はなかった」。守護神の役割を大きく上回る3イニング連続の3者凡退は、1か月前まで先発だった朗希だからこその芸当だった。

 地区Sは第1、2戦の2戦連続セーブで勢いをつけ、第4戦では突破の立役者となった。シャンパンファイトでは、ロバーツ監督が「まず、今夜は朗希を称賛しないといけない。朗希に乾杯!」と第一声。

指揮官が「歴代最高のパフォーマンスの一つだ。成長や貢献度は語り尽くすことができない。これ以上なく彼を誇りに思う」と最敬礼すると、大谷も「本当に素晴らしかった。見てて頼もしいなって」と大絶賛した。

 5月に右肩インピンシメント症候群で負傷者リスト入り。佐々木はロッテ時代から痛みがあったとしたが、ロバーツ監督らには伝わっておらず、コミュニケーション不足を指摘された。一人で多くを抱え込み解決しようとする面もあったが、変わった。マイナーで状態の上がらなかった9月上旬。キャンプ中から指導を受けるロブ・ヒル投手ディレクターと膝をつき合わせて話した。「どこが問題かを聞いて、自分の中でうまくいかないところと一致する部分があった」。助言に耳を傾け、復活ロードが開けた。

 リーグ優勝決定S以降もフル回転が求められる。

「サポートしてくれた人に感謝していますし、自分のパフォーマンスが戻るまで一緒に頑張ってくれたスタッフに感謝したいです」。ド軍を次のステージに導いた朗希は、感謝を胸に、世界一までチームに尽くす。(安藤 宏太)

 ◆朗希に聞く

 ―圧倒している理由は。

 「ストレートの球速が戻ってきたことと、それに伴ってフォークもよくなって、その分、ゾーンで勝負できているところ。ストレートの強さとスピードとコントロールが自分の中でいいラインまで来たので、ゾーンで勝負できるようになった。その分変化球もより生きていると感じる」

 ―3回は想定したか。

 「2イニングまでは言われてました」

 ―緊張感は。

 「緊張感は登板ごとに最初よりは減ってはいる。ゾーンに入っているとかではなく、こうしたらいいパフォーマンスを出せるという技術的なもので信頼できるものが今はあるので、それが自分の心を落ち着かせているのがパフォーマンスを出せる要因かなと」

 ―監督も絶賛していた。

 「あのまま(リハビリから復帰せずに)終わるよりは、来年につながる何かをポストシーズンでいろいろ経験して、という思いがあった。今は少しずつそういう感覚がある。チームのために今は働けているのでよかった」

 ◆主な“掟破り”リリーフ

 ▽田中将(楽天=13年日本シリーズ

 第6戦に先発し160球の熱投も4失点で黒星。

翌日の7戦目に抑えとして9回に登板し、日本一に導いた。

 ▽A・ミラー(インディアンス=16年ア・リーグ優勝決定S)

 ブルージェイズ戦で初戦から3試合連続回またぎ救援。第5戦は2回2/3を投げ、4登板、7回2/3を無失点、14奪三振でMVP。

 ▽サファテ(ソフトバンク=17年日本シリーズ)

 第2、3戦と連続セーブ。第6戦は、9回から続投志願で来日初の3回を無失点。MVPに。

 ▽大谷(日本代表=23年WBC決勝)

 2試合に先発したが、米国戦は9回に登板。最後はトラウトを空振り三振に仕留め、世界一に導きMVP。

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