◆歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」(21日千秋楽)
あの團子ちゃんが宙を飛んでいるのを見上げながら感慨にふけってしまった。義太夫三大名作の「義経千本桜」でAプロで狐忠信に挑んでいる。
忠信は大役中の大役。祖父猿翁がケレン味たっぷりの澤屋型で初めて宙乗りを披露し、従叔父の現猿之助が当たり役にした。猿翁当時25歳、猿之助37歳の時。今月ダブルキャストの尾上右近でさえ33歳だ。若き忠信の誕生と言える。
鳥居前、舞踊劇の吉野山、そして通称・四の切。この3場に出ている。
鳥居前。花道の出で筋隈がよく似合い、顔付きが猿之助、声は祖父そっくり。2人が後ろで見守るようだ。
吉野山。ここが一番の出来。花道スッポンからセリ上がった東(あずま)からげの旅姿。静御前と並んで決まる「男雛女雛」に拍手が来た。鼓に頬を寄せて親を慕う思い。ケレンと心理の両立。澤屋の型、心だ。
最後は川連法眼館・四の切。注目の見せ場である。キツネ言葉は今後、工夫が必要だが、鼓が鳴る音に喜び、踊る芝居が感動を呼ぶ。
宙乗りは激しく体を動かして躍動的。