◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 福岡県民なら誰もが「いざゆけ若鷹(たか)軍団」を口ずさめる。球場だけでなく商業施設や街中でも流れ、もはや県歌の域にも達しているホークスの応援歌は「我らの我らのソフトバンクホークス」というフレーズで締められる。

 この「ソフトバンク」の部分はかつて「ダイエー」だった。05年にソフトバンクが球団を買収した際、応援歌は引き継がれ、最後のフレーズのみ変更となった。字余りの懸念もよそに、すぐに定着した。

 チーム名やカラーは変わったが、ソフトバンク側は球団の伝統やアイデンティティーを守った。応援歌や、マスコット、何より球団自体が福岡に残った。球場の演出は進化し、潤沢な資金により選手層も厚くなった。魅力的な球団になった。優勝して胴上げされる孫正義オーナーには、今年も万雷の拍手が送られた。

 親会社・日産自動車の身売り画策が表面化したJ1横浜FMについても、このような未来を期待していた。記者1年目に担当し、個人的思い入れも強い。近年は親会社業績不振のあおりが、チーム運営に少なからず影響していたとも聞く。来たるべき時が来た、と感じていた。

 日産は急転「マリノスの筆頭株主であり続ける」と声明を出した。6705億円の赤字(25年3月期)を抱え、従業員2万人削減を決めた企業が親会社を継続する―。日産もクラブもいばらの道を選んだと言える。ただ、この決定が正解だったのか、そうじゃなかったのかは、これから決まる。選んだ道を正解にするしかない。(サッカー担当・岡島 智哉)

 ◆岡島 智哉(おかじま・ともや)福岡出身。2016年入社。好きな助っ人はホークスがバルデス、次点でサファテ。横浜FMがドゥトラ、次点でウーゴヴィエイラ。

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