巨人・長野久義外野手(40)が今季限りで現役を引退することが13日、分かった。すでに球団、阿部監督、チームメートらに意思を伝えた。

近日中に発表される。16年目の今季は1軍で出場17試合にとどまり、決意を固めたもようだ。首位打者、最多安打を獲得するなど現役通算1512安打をマークし、紳士的な人柄でファンに愛されたバットマン。記録と記憶に残る名選手が、現役生活に別れを告げる。

 巨人の一時代を築いた天才打者・長野が、ユニホームを脱ぐことを決断した。12日のCS第1ステージDeNA戦で3か月ぶりに出場選手登録も出番はなく「個人的にもチームとしても悔しいシーズンでした」とプロ16年目を振り返った背番号7。一夜明けた13日までにチームメートや関係者に報告を済ませたもようだ。

 今季は自己最少の出場17試合にとどまったが、精神的支柱としての存在感は抜群だった。助言を求める若手に惜しみなく自身の経験を伝え「そういう姿はマッチさん(松田宣浩)から教わっている。僕がやれば、他の選手もやってくれると思う」と、ベンチの最前線で声を張り上げてチームを鼓舞。2軍が優勝を決めた9月16日のイースタン・西武戦(カーミニーク)では延長10回タイブレークで代走出場を申し出るなど、グラウンド内外で献身的にチームを支えた。

 走攻守そろった万能型の外野手。

2度の指名拒否を経て09年ドラフト1位で社会人のホンダから入団した。柔らかいバットさばきで左右に打ち分け、通算10度の2ケタ本塁打などパンチ力も兼備。10年に新人王、11年は首位打者、12年に最多安打を獲得し、デビューから球界のトップを走り続けてきた。12年からのリーグ3連覇は、長野の存在なくして語れない。グアム自主トレでともに汗を流した阿部慎之助坂本勇人とともに、2010年代の黄金期の象徴。12年の最終戦で坂本と最多安打のタイトルを分け合ったシーンは、キャリアのひとつのハイライトだった。

 18年オフ、FA移籍した丸の人的補償で広島入り。移籍2年目の20年に代打としての打率4割4分をマークするなど、新天地でも驚異的な勝負強さで貢献した。22年オフにトレードで4年ぶりに巨人復帰した際、広島・鈴木球団本部長は「いつかユニホームを脱ぐことがあるとしたら、やはり巨人で脱ぐべきじゃないか」とコメント。その親心通り、愛するチームと、兄貴分の阿部監督の下で現役を全うした。

 気配りを忘れない人柄で、誰からも慕われた。新入団の選手にはチームになじんでもらおうと真っ先に声をかけ、外国人選手は春季キャンプ中に食事に誘った。

試合でミスをした選手に連絡をするなど、心遣いのエピソードを挙げればキリがない。昨年、MLB挑戦を視野に入れていた菅野には「俺はメジャーで投げてるところを見たいな」と夢を後押しした。

 今後は未定だが、近日中に自身の言葉で胸中を明かすとみられる。通算1512安打、163本塁打。記録以上に多くの財産を残した40歳が、静かにバットを置く。

 ◆長野 久義(ちょうの・ひさよし)1984年12月6日、佐賀県生まれ。40歳。福岡・筑陽学園から日大に進学。2006年大学・社会人ドラフトで日本ハムの4巡目指名を拒否し、ホンダ入り。08年ドラフトはロッテの2位指名を拒否。09年ドラフト1位で巨人入り。10年に新人王、11年に首位打者、12年に最多安打のタイトルを獲得。

13年の第3回WBC日本代表。ファンから坂本勇人と“サカチョーコンビ”の愛称で親しまれた。180センチ、85キロ。右投右打。

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