9月の世界バレーでメダルを目指した男子日本代表は、悔しい1次リーグ敗退で終えた。攻守の軸を担ったアウトサイドヒッター・高橋藍(24)=サントリー=が、コラム「百花繚藍」で大会をプレーバック。

初戦のトルコ戦から2連敗した要因を自己分析し、プレースタイルで大事にしている「本能」を再確認した。悔しさを糧に変え、24日から開幕する2季目の大同生命SVリーグでの2連覇へ切り替えた。

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 世界選手権は悔しい、というよりも自分たちが何もできていなかったというのが現状で、今の自分たちの弱さを認めることが必要だと感じました。この負けを経験として成長につなげていかないといけない。そう思いました。

 今大会で日本は挑戦していく立場でしたけど、逆に欧州のチームが日本に対して本気で倒しにきているなと、プレーしていて感じました。例えばサーブです。相手は自分を狙ってきませんでした。おそらく、自分にはサーブレシーブをしてからの(スパイクの)決定率があるからで、自分にリズムを作らせないためにサーブで自分を狙ってこなかったのだろうと思いました。逆に自分がパイプ(後衛の中央付近からの攻撃)の時は(体勢を立て直しにくいため前に落とす)ショートサーブを打ってきたり。自分を含めて日本のどの選手も弱い部分を対策されていたし、他国が日本を倒すためにいろんな分析をしてきたことが分かりました。

 勝つためにはどうすべきか。

自分は1つ、データ以上のことをしないといけないと思います。(サーブで)パイプを潰しに来ても、意地でもパイプに入れる力も必要です。スパイクで得意のコースをふさがれた時に逆をつくとか、相手が予測できない、データに逆らうことを試合中にする対応力は大事。もちろん技術も必要で、この力は全選手に課されていることだと感じます。

 日本はこれまで高さやパワーが他国に劣る分、レシーブや総合的なブロックシステムの質が高いから勝ってきましたけど、今はどの国も日本をマネして強化しています。日本の強みが今は世界の通常で、バレー界が動いています。だからこそディフェンスの質ではトップを走り続けないといけないのです。

 個人として収穫もありました。1戦目のトルコ戦は相手守備も良く、波に乗れなかったけど、2戦目のカナダ戦で切り替えられたことは良かったと思います。チームを勝たせないと、どこかそう考え過ぎていました。うすうす自分でも感じていた中で、1戦目の翌日の練習で(元日本代表の)福沢(達哉)さんと話す機会がありました。そこで「藍は本能的にやるのがスタイルじゃない?」と言われて確かに! 2戦目は一度、ゼロに戻して「自分の感覚に従う」と決めてコートに立ちました。

 3枚ブロックが来た時にリバウンドを取ろうではなく(行けるなら)打ちに行く。カナダ戦、3戦目のリビア戦はパフォーマンスが全然違ったので、頭で考えるより先に体が動く感覚。これまでも本能や感覚でやってきたし、これが自分のスタイルだと気づきました。

 24日にSVリーグ2季目が開幕し、2連覇を目指していきます。自分が強くなることは代表でもチームにおいても重要。悔しさを忘れず、1点を取りきる力を求めてやっていきます。

 ◆世界選手権1次リーグ

 ▽第1戦・トルコ(9月13日) 51年ぶりメダルを目指した世界ランク5位の日本は、G組で同16位の格下にストレート負け。痛恨の黒星発進となった。相手の守備が良く、藍や石川祐希が徹底マークされた。藍は22本の攻撃で得点は4本と抑えられた。

 ▽第2戦・カナダ(同15日) 世界9位に0―3を喫し、まさかの2連敗。G組3位以下が確定し、2大会ぶりに1次リーグ敗退。

藍はチーム最多11得点と奮闘したが、日本はサーブレシーブで崩され、主導権を奪えないまま敗れた。

 ▽第3戦・リビア(同17日) 消化試合となった最終戦で同75位に3―0勝利。次につなげる白星を挙げて大会を終えた。藍は宮浦健人、石川に次ぐチーム3位の11得点。今大会で初めて守備からリズムを作る日本らしい戦い方が出た。

 ◆高橋 藍(たかはし・らん)2001年9月2日、京都市生まれ。24歳。バレーは小学2年から。京都・東山高3年時の19年度全日本高校選手権で優勝。日本代表初選出は20年2月。同年4月に日体大進学。2年時の21年11月にセリエAのパドバと契約し、23―24年シーズンはモンツァでプレーオフ準優勝。

24―25年シーズン、日本のサントリー入り。五輪は21年東京、24年パリ大会で7位。188センチ、83キロのアウトサイドヒッター。

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