長澤まさみ主演の映画「おーい、応為」初日公開を控えた16日、女流落語家・林家あんこ(39)による話題の自作落語『北斎の娘』の新作「応為の花嫁修業」が東京・人形町の「日本橋社会教育会館ホール」で披露された。注目映画の公開前日とあって会場はほぼ満席。

江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎の弟子で娘だった葛飾応為への関心の高さをうかがわせた。

 冒頭にはあんこが「(映画公開で)勝手にこの人、乗っかっているなー、じゃなくてちゃんと配給会社さんにも許可をいただいての“前日公開スペシャル会”です。(非公認キャラクターの)ふなっしー状態じゃないですからご安心を」と話し、笑いをつかむと、早速、新作落語「応為の花嫁修業」を口演した。

 応為に北斎という父がいたように、あんこ自身も二代・林家時蔵を父に持つ2世初の女性落語家。偉大な父を持つ苦悩や葛藤などを盛り込んだ創作落語『北斎の娘』は中入りをはさむ約50分にも及ぶ壮大なストーリーで、22年から口演。披露される独演会は毎回、チケット完売になるほど。

 今回の新作はそのスピンオフ。「北斎と応為が出てくる10分ぐらいの話をたくさん作っていて、登場人物は同じだけど、話が毎回違う。サザエさんと思っていただけると分かりやすいのでは。毎週やっているけど出来事が違う、みたいな」とあんこ。この日の作品は応為が挿絵を施した「今でいうと(結婚情報誌の)『ゼクシィ』のような当時の「女重宝記」から着想を得た」番外編で、江戸の情緒とともにその時代を生きた応為の生きざまをコミカルに語り尽す内容。口演後には、すみだ北斎美術館の学芸員を招いたスペシャルトークも行い、映画を楽しむための予習イベントにもなった。

 もちろん『北斎の娘』の通し口演も行われ、客席を応為の世界にどっぷりと引き込んだ。映画「おーい、応為」配給会社・ヨアケの吉村知己代表取締役も会場を訪れ、終演後には楽屋にあんこを訪問。「ものすごく感動しました!」と感想を伝えると、あんこも「映画公開で葛飾北斎、応為ブームがどんどん盛り上がっていけば」と笑顔を見せた。10月28日(火)には「第五回『北斎の娘』を育てる会」(鈴座Lisa cafe)、12月12日には「第三回『北斎の娘』を聴く会」(すみだトリフォニーホール小ホール)を行う。

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