33年前、高市早苗首相の政界入りを一番最初にスクープで報じたのは、実はスポーツ報知だった。そのときの様子を、当時を知る記者が振り返る。

 33年前、大阪勤務時代の出来事だが、消えない記憶として残っている。記者2年目の24歳。このスクープ記事は奈良に住んでいた複数の先輩記者が“地の利”も生かしながら、時間をかけてつかみ取った特ダネだった。一般紙が狙うネタをスポーツ紙が先んじて報じた。

 記事が載った後、先輩にくっついて本人取材で奈良まで行った。文化社会部に配属され、間もなくのころ。一般紙の記者がほとんどの中、囲み取材は記者も座った状態でのやり取り。そのときいくつかショックを受けた。

 高市首相の受け答えはコテコテの関西弁で親しみを感じさせる、どこか近所のお姉さんのよう。政治を志す人にもこれほど気さくな人がいるのか、という驚き。一方、連れてきてくれた先輩は囲み取材の後半になると、太ももの上に原稿用紙を乗せ、当時あった夕刊用に一気かせいに記事を書き上げてしまった。

 無力感に打ちひしがれた“あの時”をいまも懐かしく思い出す。

お姉さんは歩みを止めず信念を貫き、国のトップに上り詰めた。こちらはしがない記者のままである。(内野 小百美)

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