◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
「ロマン枠」として取材していた21歳の大学生が、想定外のスピードで進化している。優勝賞金1000万円を懸けた「フェニックストーナメント・アジアヘビー級チャレンジ杯」。
初めて取材したのは3月だった。ボクシング歴は1年あまりだが、192センチの長身、名門・帝京高サッカー部出身というポテンシャルに「ロマン」を感じた。デビュー戦となった5月の1回戦は引き分け(優勢点で準々決勝進出)。印象は薄かった。だが、7月の準々決勝で驚かされた。プロ・アマ6戦全KO勝ちの中国人選手を見事にアウトボックス(距離を取って判定勝ち)した。9月の準決勝では、元アマエリートを右一撃でKO。絶妙に重心が制御されたステップから繰り出される左のダブルを見て、驚きは倍増した。
急成長の裏には運命の出会いがある。大学入学後、友人に誘われて「たまたま家が近くて」入門したジムのOBが、日本人初のヘビー級世界ランカーとなった藤本京太郎トレーナーだった。7月、大沼は「京太郎さんにすべてを教えてもらっている。
1000万円まであと1勝。「ボクシングシューズが欲しい。もう3個壊れたので壊れないやつ」。31・5センチの足で描く成長曲線は、栄光への架け橋になるかもしれない。世界への道のりは遠いが、日本ランキングが空っぽのままのヘビー級にもロマンはある。(ボクシング担当・勝田 成紀)
◆勝田 成紀(かつた・しげき)1998年入社。1月から現職。