高市早苗首相(64)は24日、就任後初の所信表明演説を衆院本会議で行った。自民党が新たに日本維新の会と連立を組み、公明党と距離を置くことになった現状が色濃く反映された内容となった。

 高市氏は冒頭、政治の安定に向け「日本再起を目指す広範な政策合意の下、自民、維新による連立政権を樹立した」と説明した。物価高対策を最優先に据え、「強い経済」の構築に向けて責任ある積極財政の考えの下、戦略的に財政出動すると言明する一方で、維新が掲げる政策を強調。「副首都」構想や高校授業料の無償化、社会保障制度改革を進めると訴えた。

 演説中には、幕末の志士・吉田松陰の言葉「事を論ずるには、まさにおのれの地、おのれ身より見を起こすべし、すなわち着実となす」の言葉を引用。「天下国家を論じるには自分が暮らす場所・立場から考えるのが着実である」の意味だが、これは維新の藤田文武共同代表が高市氏の首相就任直後に用いた松陰の言葉「諸君、狂いたまえ」を意識した可能性が高い。

 ただ、高市氏の演説には自民と維新の連立合意に盛り込まれた「衆院議員定数の削減」「企業・団体献金の制度改革」への具体的な言及はなし。首相周辺は「議員立法の形を取るため、政府の立場での言及は控えた」と釈明した。定員削減については萩生田光一幹事長代行が年内の法案成立に否定的な見解を示しており、自民内の異論に配慮した可能性がある。

 また公明が連立を離脱した最大要因だった「派閥裏金事件」への言及もゼロ。実際に高市氏は、裏金議員を積極登用しており、萩生田氏を幹事長代行に起用したほか、副大臣・政務官にも7人が名を連ね、「問題なし」としている。

 石破茂前首相が昨年10月、就任直後の所信表明演説で冒頭に「国民の政治不信を招いた事態について、深い反省とともに触れねばならない」と裏金事件に言及したのとは対照的。高市氏の大幅なスタンス変更は「裏金騒動からの脱却」と「公明との決別」の意思を色濃く表すものだった。

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