数多くのスポーツ選手などの物語を語ってきたタレントの山田雅人(64)が、このほど米ニューヨークの「日本クラブ」で「かたりの世界」を開催。集まった約150人の観客からスタンディングオベーションを受けるなど、言葉の壁を越えて大成功を収めた。

 初の海外公演が実現したきっかけは「日本クラブ」の関係者が、これまでとは違う新たな日本の文化を探していた時に、昨年6月に山田が日テレ系「笑点」で「長嶋茂雄物語」を披露した映像を見たこと。一人芝居や朗読、漫談ではなく、山田が実際に本人や周囲の人たちを綿密に取材して浮かび上がった真実を基にマイク1本で伝える「かたり」を米国で紹介したいとオファーした。一番の問題は言葉の壁だったが、AIによるリアルタイムでの自動翻訳で背後のモニターに英語の字幕を流すことでクリアした。

客席は現地の日本人と米国人が約半分ずつ。最初にその時の話題の人物を登場させる「架空競馬実況」でトランプ大統領などを走らせて盛り上げると、「かたり」では数ある物語の中から「松井秀喜師弟物語」を披露。ヤンキースでの活躍は当然のように分かっているニューヨーカーも、巨人時代に長嶋監督と共に歩んだ師弟の絆などについてはほとんど知らず、山田の笑いも交えての熱い語りに引き込まれて涙する人もいた。

 開演前はどれだけ受け入れられるか不安だった山田も、観客の大きな拍手に包まれて「情熱、パッションは言葉が分からなくても伝わるんだということが分かりました」と感動の様子だった。翌日には地元情報紙「YOMITIME」「週刊NY生活」の2紙に写真入りで取り上げられるなど反響も大きく、来年はニューヨークの他にも「ロサンゼルスで大谷翔平物語を」という話も出ているという。今後、ヤンキースにも所属したイチローや、ドジャースでの活躍がその後の日本人選手の海外挑戦の道筋を作った野茂英雄など、米国でもなじみのあるヒーローの知られざる物語も伝えていきたいと夢は広がっている。

 国内では11月3日に東京・有楽町の「よみうりホール」で行われる「徳光和夫のありがとう! ミスター寄席」にナイツ松村邦洋らと出演し、「長嶋茂雄物語」を語る。また同17日には大阪・梅田の「サンケイホールブリーゼ」に中畑清氏、掛布雅之氏と巨人、阪神の両OB会長をゲストに招いて、それぞれの球団の「かたり」を披露する。当日は3人で舞台に登場し、物語の途中で本人にその時の心境などを話してもらう「ストップモーション」を取り入れる予定だ。

唯一無二の話芸である「かたり」が様々な形で日本国内はもちろん、「KATARI」となって世界へと広がっていく。

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