◆米大リーグ ワールドシリーズ第1戦 ブルージェイズ11―4ドジャース(24日、カナダ・オンタリオ州トロント=ロジャーズセンター)

 ドジャースの大谷翔平投手(31)が24日(日本時間25日)、ワールドシリーズ(WS)第1戦に「1番・DH」で出場。9点を追う7回、日本人では松井秀喜(ヤンキース)以来2人目となるWS1号2ランを放ったが、チームはブルージェイズに大敗した。

大量得点差の9回には大谷の打席で敵地ファンから「We don’t need you」(俺たちにお前は必要ない)」と異例の大合唱も起こった。

 笑顔はない。長い滞空時間とは対照的に、大谷は前の走者に追いつきそうなスピードでダイヤモンドを一周した。満足できないのも無理はない。2―11と9点を追う7回1死一塁で出た空砲。2連覇へ向けた頂上決戦。勝利がすべての中での一発で余韻に浸ることはなかった。

 3打席目までは2三振など快音なし。1点リードの2回2死満塁で一ゴロに倒れた。4打席目、右腕・フィッシャーの低めのカーブをすくい上げ右翼席へ運んだ。今季の本塁打の中では、2本あった42度に次ぐ打球角度は41度。最高到達地点は138フィート(約42メートル)、滞空時間6・3秒の一発だったが投手陣が11失点し大敗だった。

 異例の光景が広がったのは7点差の9回2死。大谷の5打席目だった。敗戦まであと一人の状況でブルージェイズファンから「We don’t need you」(俺たちにお前は必要ない)の大合唱。四球で出塁したが、球場は異様な雰囲気に包まれた。

 当時FAだった23年12月の「トロント入り」誤情報が尾を引き、試合前は名前をコールされただけで大ブーイング。選手紹介では苦笑いで、打席に入る度に繰り返された。「それを力に変えて行ければと思っています」と話していた大谷らしく意地の一発は見せた。

 3発を放ったリーグ優勝決定S第4戦から中6日が空いたが、2戦連発で今PS6号。WS1号でPSの通算9本となり、松井秀喜の持つ日本人最多10本にもあと1本に迫った。大敗の中で数少ない収穫にロバーツ監督も「あのホームランはナイス。この調子を続けてくれることを願う。問題ないだろう」と変わらぬ信頼を口にした。

 昨季からのPS7戦シリーズでドジャースの第1戦の黒星発進は初めて。1903年から始まった過去120回のWSで初戦を落としたチームの優勝は43度で35・8%。2連敗となれば57チームで11チームしか逆転しておらず、19・3%まで確率は下がる。ド軍のようにリーグ優勝決定シリーズを無敗で突破したチームと、ブ軍のように4勝3敗突破チームのWS対決は過去4度あり全勝突破チームが世界一になった例はない不吉なデータもあるが、「自分たちのチームに対して、自信もあるし、チームの絆にみんな自信を持っている」と2連覇への思いを口にしていた大谷。残り4勝を目指す戦いは始まったばかりだ。(安藤 宏太)

 ◆大谷の打席での主な大合唱

 ▽「Come! to! Seattle!(シアトルに来て!)」 トレード期限、オフのFAを控えた23年7月のシアトルの球宴で異例の勧誘コールに「ちょっと複雑な気持ちでしたけど…」。

 ▽「Come! to! Texas!(テキサスに来て!)」 球宴約1か月後の23年8月に敵地・レンジャース戦で初回の1打席目に立つと異例の大合唱。外野席ではファンがボードも掲げていた。

 ▽大ブーイング FAでの新天地熟考期間の23年オフにトロント行きのチャーター機に乗ったという誤情報があり、期待を抱いたブルージェイズファンは24年4月の対戦で大ブーイングを浴びせたが、大谷は本塁打を放ち「別にブーイングも嫌ではない」。

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