◆米大リーグ ワールドシリーズ第3戦 ドジャース6X―5ブルージェイズ=延長18回=(27日、米カリフォルニア州ロサンゼルス=ドジャースタジアム)

 歴史的な死闘に、ドジャース・山本由伸投手は自ら動いた。延長18回表途中だった午後11時23分、ブルペンに現れ、キャッチボールを開始。

急ピッチで肩を作り始めた。「ピッチャーもいなかったので行くしかないと思いましたし、体調的にも今日は行けると思ったので。志願というか、もういなかったので、『準備できる』と言いました」。25日の第2戦で9回105球を投げて1失点完投したばかり。延長13回頃から投げることを考え始め、首脳陣に登板可能と伝えた。17回に準備のためベンチ裏へ消える際には、朗希も「マジ?」と驚くほどの異例の行動だった。

 延長19回からマウンドに上がる予定だった。ロバーツ監督は明かす。「必要なだけ投げてもらおうと思っていた。彼を最後の投手にする予定だった」。最後はエースと心中する覚悟だった。フリーマンの劇弾で、結果的に出番は来なかった。

投球練習中に左翼のブルペンから中堅へのアーチを見届け「助かりました、ホームラン打ってくれて」。笑わせたが、半分は本音も交じったはずだ。指揮官はブルペンから戻ってきたエースを力強く抱きしめた。「チャンピオンになるためなら何でもするということを物語った。彼らは全てを懸けている」と献身性に敬意を払った。

 山本にとっては、大きな一歩だった。プロ1年目の17年。8月に1軍に昇格して5試合に先発したが、いずれも中10日以上の登板間隔が開けられ、1度も100球を投げられず、5回が最長だった。そこから今でも従事する個人トレーナーの矢田修氏との歩みが始まった。やり投げトレや、ウェートを使用しない独自のトレーニングを積み重ねてきたのも矢田氏の勧めだ。

 「こういう試合で投げられるようにこれまで何年も練習してきた」と山本。元々は陸上が専門だった矢田氏との二人三脚でメジャーでもフル回転する肉体、フォームを手に入れ、「2日後に投げられるような体になっていたというのはすごく成長を感じましたし、やっぱり矢田修という男がどれだけすごいかが証明できたかなと思います」と感謝の言葉を口にした。

 今後は予定通り、中5日で迎える敵地での第6戦の先発へ向けて調整を再開させる。エースの責任と覚悟を示した1日となった。(安藤 宏太)

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