将棋の第73期王座戦五番勝負第5局が28日、山梨・甲府市の常磐ホテルで指された。後手の藤井聡太王座(23)=竜王、名人、王位、棋聖、棋王、王将=が伊藤匠叡王(23)に97手で敗れ、2勝3敗で2023年6月以来の六冠に後退した。

伊藤は現在保持している叡王に続くタイトル獲得で、二冠となった。

 相掛かりの戦型となる中、藤井は午前中から1時間を超える長考をするなど時間を使う苦しい展開。午後に入って藤井が敵陣に攻め入ったが、一瞬の隙を突いて伊藤が反撃。徐々に形勢が傾き始めると、藤井の前のめりになって盤をじっと見つめる時間が長くなった。最後は共に1分将棋にもつれ込んだが、伊藤に押し切られた。

 終局後も顎に手をあて、盤面を見続けた。「こっちから動いていかなければと思ったけど、いい手の組み合わせが分からなかった」と声を落とし「終盤戦で競り負けるような形になった。少しずつ力をつけていくしかない」と唇をかんだ。

 伊藤に敗れ、初の失冠となった23年度の叡王戦で決着がついたのも同ホテル。くしくも同じ対局場、同じ相手で苦杯をなめることとなった。

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