東京六大学野球秋季リーグ戦第7週第3日▽法大10―1東大(28日・神宮)

 東大のエースでサブマリンの渡辺向輝(4年=海城)がユニホームに別れを告げた。法大3回戦では3番手で救援。

4失点で降板し、勝ち点奪取はならなかったが、45球の力投に神宮の杜には温かい拍手が鳴り響いた。

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 向輝の父で元ロッテ投手の渡辺俊介氏(49)が神宮のスタンドから観戦。試合後は報道陣に対応し、長男の奮闘をねぎらった。

 「今日は父親としてずっとスタンドにいました。抑えた場面とか、本当にうれしそうに(ベンチへ)戻ってくる姿を見て、4年間やってくれて良かったなと。彼ら一人一人の頑張りに毎回感動して、知らぬ間に東大野球部ファンになっています。きょうに関しては涙というよりは、『お疲れさん』という気持ちです」

 我が子は小学5年の終わりに模試で偏差値80・5を記録した秀才。幼き頃から父の職場である千葉マリンスタジアムに慣れ親しんだ。小学3年から野球を始め、海城中では軟式、海城では硬式でプレー。東大に現役合格すると、野球部の門をたたいた。2年春から父と同じ下手投げへ完全転向することで飛躍のきっかけをつかみ、リーグを代表する右腕の一人になった。

 「自分の息子ですけど、素直にすごいなと。

東大に入った時点で立派だなと思ってましたし、誇りに思ってます。人生、これからがスタートだと思う。これまでの経験を生かして、また一歩一歩謙虚にやっていってくれればと思っています」

 囲み取材を終えると、俊介氏は報道陣に「4年間、お世話になりました」と頭を下げた。いや、感謝したいのは我々の方だ。渡辺向輝という唯一無二の投手と、この神宮で胸が躍る時間を過ごせたのだから。(加藤 弘士)

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