将棋の第73期王座戦五番勝負第5局が28日、山梨・甲府市の常磐ホテルで指された。先手の挑戦者・伊藤匠叡王(23)が藤井聡太王座(23)=竜王、名人、王位、棋聖、棋王、王将=に97手で勝利し、シリーズ通算3勝2敗でタイトルを獲得。

現在保持している叡王に続く二冠となった。

 終局から約1時間半がたち、会見場に姿を現した新王座は「まだまだ実感が湧かない、信じられないという気持ち」と半信半疑の表情。シリーズを振り返り「第2局はかなり苦しい局面が多くて、勝利できたのは大きかった。藤井さんを相手にリードして押し切る将棋が指せていなかったので、第3局や第5局は充実した将棋を指すことができた」と自信が出てきた様子を見せた。

 藤井との番勝負は、伊藤が初めてタイトルを獲得した第9期叡王戦以来、約1年4か月ぶり。藤井の印象を「一手一手の指し手の精度が高い。ほとんど悪い手を指してこない」とし、自らが指す上でも「こちらもしっかりと一手一手、緩みなく指していかないと勝負していくのが難しい」と集中していたという。

 これでタイトル獲得3期となり、九段に昇段。今年、叡王を初防衛して八段となった際には、師匠の宮田利男八段に「師匠に並びました」と報告していた。今回の王座獲得、昇段の報告は「そうですね…。それについては特に考えていないですけど」と笑った一方で、「九段に昇段するのはハードルが高いことだと思っていたので、『まさかこんなに早く昇段できるとは』という思いが強い。でも、段位とか関係なく師匠は遠い存在なので」と冷静に語った。

 藤井とは小学生時代からしのぎを削ってきた。ライバルと言われることについては「呼んでいただけるのは光栄なこと。まだまだタイトルに挑戦するとなると藤井さん相手とになる。他の棋戦も含めて、さらに藤井さんに挑戦していきたい」と意欲を見せた。

 現在のコンディションを「自身の棋力を向上させる意欲が高まっている」と説明。「まだまだ強くなる余地があると最近感じていて、自分が強くなっていくことが楽しみ」と充実した表情を見せていた。

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