◆米大リーグ ワールドシリーズ第3戦 ドジャース6x―5=延長18回=ブルージェイズ(27日、米カリフォルニア州ロサンゼルス=ドジャースタジアム)

 ドジャースが27日(日本時間28日)、1勝1敗で迎えた本拠地でのワールドシリーズ第3戦のブルージェイズ戦の死闘を劇的なサヨナラ勝ちで制して2連勝で対戦成績を2勝1敗とした。「1番・指名打者」でフル出場した大谷翔平投手(31)は2本塁打を放つなど4打数4安打(2発、2二塁打の4長打)3打点、4申告敬遠、1四球の大暴れだった。

佐々木朗希投手(23)は日本人投手8人目となるワールドシリーズ初登板を果たして1回2/3を無失点で抑える好救援。試合時間6時間39分の激闘に終止符を打ったのはフリーマンのサヨナラ弾だった。

 延長18回表。ブルペンに最後に残ったクラインがマウンドに上がった延長15回から全く動きのなかった左翼のドジャースブルペンに注目が集まった。2日前の25日(同26日)に105球を投げて9回1失点で完投した山本由伸投手(27)が準備を始めた。18回裏に決着がついて結果的にマウンドには立たなかったが、15~18回に4イニングを投げた10番手のクラインの投球数は72。19回となれば山本がマウンドに向かう見込みだった。

 山本は試合後「ピッチャーもいなかったので行くしかないと思いましたし、体調的にも今日は行けると思ったのでいきました。志願というか、もういなかったので、(首脳陣に)『準備できる』と言いました」と振り返った。ロバーツ監督も「必要なだけ投げてもらおうと思っていた。彼を最後の投手にする予定だった」と明かした。

 だが、「最後のとりで」として選ばれたのは、なぜ山本だったのか。

ほかにも選択肢は残っていた。投手では翌第4戦に先発予定の大谷、第5戦先発予定で前回登板から中2日だったスネルの2人。さらには最終手段として投手を守るために野手が登板するという選択肢も、限りなく少ないとは言え、選手を守る意味も含めて0ではなかったはずだ。

 登板間隔を考慮すると、17日(同18日)の登板が最後だった大谷が筆頭候補になるはずだ。実際にブルージェイズは第4戦に先発するビーバーが準備を始めていた。だが、大谷は打者として出場。延長11回には右脚をつるなど、満身創痍(そうい)だった。さらに今季は23年9月に受けた右肘手術からの復帰シーズン。強行登板で万が一アクシデントが起きた場合、今後の戦いで「打者・大谷」すら失う可能性もあり、ロバーツ監督の選択肢からは自然に消えただろう。

 スネルは第1戦に先発して、6回途中100球を投げた。中2日とは言え、山本よりも登板間隔が空いていた。だが、ESPNのA・ゴンザレス記者は自身の「X」(旧ツイッター)で「スネルは試合前にブルペンでの投球練習を行った。

彼は何度も投げることを希望したが、ノーチャンスと言われた。それが山本に道が開けた理由だ」と投稿。2日後の29日(同30日)の第5戦に中4日で登板予定とあって、試合前にブルペンで投球練習をしていたスネルが、再び準備をしてマウンドに上がることはリスクが高いと判断された模様だ。

 現行ルールではレギュラーシーズンでは延長に突入すると無死二塁から始まるタイブレークとなるため、ブルペン投手がここまでフル回転することはほとんどない。ポストシーズンでは延長でもタイブレークはなし。ポストシーズンでしか見られないような光景、決断だった。

編集部おすすめ