大相撲九州場所(11月9日初日・福岡国際センター)で4場所ぶりの三役復帰を果たした関脇・王鵬(25)=大嶽=が29日、大関昇進への起点づくりに意欲を示した。福岡・篠栗町の部屋宿舎で行われた朝稽古で、幕下以下の力士と計24番の相撲を取り、「一つでも上に」と気合十分な調整だった。

秋場所後には新師匠の大嶽親方(元幕内・玉飛鳥)が部屋を継承。まずは一年納めの九州で2場所連続、三役では初となる2ケタ白星を狙う。

 王鵬が役力士としての自覚をにじませた。西前頭2枚目だった秋場所で10勝を挙げ、春場所以来の三役復帰。28日に本格的な稽古を再開させ、この日も精力的に幕下以下の力士と計24番の相撲で汗を流した。例年なら秋巡業が行われる10月にロンドン公演が開催され、多忙を極めたが「ロンドンでも若い衆に胸を出して、四股も踏んでいた。力も入るし、特に気にならない」と調整は問題ない。

 関脇に返り咲き、次なる番付となる大関が視野に入る。同世代の出世は刺激で、今年は同期の豊昇龍(26)=立浪=、同じ00年生まれの大の里(25)=二所ノ関=が横綱に昇進した。「やっているからには一つでも上にいきたい」と言葉に力を込めた。大関昇進目安は「三役で直近3場所33勝」。まずは関脇で初の2ケタ白星を挙げ、昇進の起点をつくる。

 心機一転の再スタートでもある。秋場所後、先代師匠(現熊ケ谷親方、元十両・大竜)の定年により、大嶽部屋が新体制となった。九州場所の宿舎も移転するなど環境の変化もあるが「やること自体は変わらない。しっかり自分の良いと思う相撲を取っていけたら」と、気持ちはぶれていない。片男波部屋で玉鷲らを指導していた新師匠・大嶽親方も「王鵬は運動一つ一つでも体のこと、相撲のことを考えている。目的を持ってやると、体にもプラスに働く」と向上心に舌を巻いた。

 入門時から王鵬にはどうしても、優勝32回を誇る昭和の大横綱・大鵬の孫という言葉がついてきた。それでも今年初場所で優勝争いに加わると、次第に自身への声援が増えていった実感がある。「結果を出すことは重要だと思った。それ(大鵬の孫)も込みで応援してくれる方も増えてきてくれた。結果で見せていけるようにしたい」。初賜杯と大関ロードを見据え、ファンが祖父と重ねる期待以上に、王鵬のしこ名を輝かせる。

(大西 健太)

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