◆米大リーグ ワールドシリーズ第6戦 ブルージェイズ1―3ドジャース(31日、カナダ・オンタリオ州トロント=ロジャーズセンター)

 ドジャースは31日(日本時間11月1日)、ワールドシリーズ(WS)第6戦の敵地・ブルージェイズ戦で接戦を制して対戦成績を3勝3敗として逆王手をかけた。先発した山本由伸投手(27)は、6回5安打1失点でWS2勝目。

ポストシーズン(PS)6勝は日本人最多となった。

 冷静だった。山本は何度もうなずいた。「余分な力を抜いて、とにかく低く低く制球していけた。いい結果になってよかったです」。2点をリードの6回2死一、二塁のピンチでバーショから低めのスプリットで空振り三振を奪うと、敵地の総立ちとなっていたファンは一気に静まった。

 3者凡退は2回の1イニングだけ。毎回のように走者を背負ったが、4月以降では最も多い34%に当たる33球のスプリットを投げるなど、丁寧に低めに変化球を集めて、6日前にも戦ったブルージェイズ打線を手玉に取った。6回1死では左翼付近に観客が乱入。すぐに警備員らに確保されたが気持ちが乱れることはなかった。6回96球で5安打1失点、6奪三振。3登板連続の完投とはならなかったが「何とかリードを守って次につなぐということが大事。

それができてすごくよかったし、少しホッとする気持ちもありました」。負ければ終戦の大一番で、先発としての役割を十分に果たした。

 延長18回の死闘となった第3戦では、9回105球1失点完投から中1日で登板準備のためブルペンで投球練習を行うなど、エースとしての自覚を見せた。その状況下でも体調を整えて役割を果たし「この1週間で2往復目のトロント(とロサンゼルスの移動)なので、疲れは少し感じていましたけど、投球自体の調子は前回と比べて今日の方が良かった」。バッテリーを組んだスミスも「相手が球数を増やして、降板させようとしていた。だけど、6回まで力強い投球を見せ、バトンを渡してくれた」とたたえた。

 これでWSチーム3勝中2勝。今PS4勝目となった。PS通算6勝はメジャー2年目ながらダルビッシュ、田中将を抜いて、日本人歴代単独トップに浮上した。「プレッシャーはあったけど、とにかくいい結果になることを願って、全力で投げた」。第7戦次第ではあるが、連覇すれば現時点ではシリーズMVPの筆頭候補で「本当によくやれたかなと思う」と珍しく、自画自賛だった。

 ロバーツ監督は第7戦で山本を起用しないことを断言。

頂点への願いは同僚に託した。「もちろん行けと言われたら行きますけど、できれば応援を頑張りたい」と笑った山本。試合後には朗希と抱き合って、勝利の味をかみしめた。エースとして頂点への道筋を作る役割は十分に果たした。(安藤 宏太)

 ◆山本に聞く

 ―投球を振り返って。

 「前回立ち上がりでピンチになったので、今回は特に抑えたいなと思っていた。まずそこがうまくいった」

 ―6回途中にファンが乱入して試合が一時中断。

 「なかなかない間というか、そういった時間だった。ちょっと嫌な感じはあったけど、2球くらい投球練習をして、調子も良かった。気にせず投げられました」

 ―6回での降板。

 「もちろんもう1イニング行くつもりでベンチには戻ったけど、交代ということだった」

 ―前回登板と変えた部分は。

 「2戦連続(の対戦)だったので、少し探りながら入るボールもあったし、変えたところもあった。

逆に同じような配球した場面もあった。ちょっと迷った時はスプリットで行くことが多かった」

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