◆第42回ブリーダーズCクラシック・G1(日本時間11月2日、米デルマー競馬場・ダート2000メートル)

 歴史的快挙だ! 米国競馬の祭典、ブリーダーズC(BC)が2日間にわたってカリフォルニア州のデルマー競馬場で開催され、2日(現地時間1日)に行われたメインのBCクラシック(ダート2000メートル)はフォーエバーヤングが日本調教馬として初制覇。3着に敗れた昨年の雪辱を果たし、ダート世界一の座を手にした。

坂井瑠星騎手(28)=栗東・矢作厩舎=は2月のサウジC以来となる海外G1・2勝目。矢作芳人調教師(64)は同10勝目となった。

 確固たる信頼が全身を突き動かしていた。3コーナー。坂井は好位を追走するフォーエバーヤングの手綱を押した。直線手前で早々と先頭へ。迷いはない。両腕を激しく動かすと、世界一の座が待っているゴールへ加速する。直線で外から伸びてきたのはシエラレオーネ、フィアースネス。昨年のこのレースで先着された2頭だ。その脅威を振り払うように右ステッキを振り下ろす。最後まで止まることなく、先頭で駆け抜けたゴール板。

その瞬間、坂井の右腕が高々と上がった。

 「すばらしい馬です。信じられない。夢のような気持ちです。(フォーエバーヤングは)世界中で活躍しているスーパースターだと思います」と鞍上は相棒をたたえた。過去41回で米国調教馬以外の勝利は2度のみ。芝がメインの日本競馬にとって、とてつもなく高い壁だった米国ダートの最高峰と言える大一番を、ついに制した。「日本の競馬界にとって考えられない。サッカー日本代表がワールドカップで優勝したような感じです」と矢作調教師。21年にマルシュロレーヌで制したBCディスタフから4年。やはり、この男が日本競馬の歴史を塗り替えた。

 敗戦を糧にした。

3着だった昨年の結果を踏まえ、策を練った。「コーナーで置かれるところがある馬だが、デルマーは直線が短いので4コーナーでトップスピードに乗るような調教をしてきた」と矢作師は説明する。その意図を伝え、追い切りで実行に移したのは厩舎所属の弟子で、デビューから全戦の手綱を託してきた坂井。師弟の厚い絆と、常に海外へ挑戦を続けてきた豊富な海外経験があるからこそできた攻めの姿勢が勝利を引き寄せた。

 これで獲得賞金も日本馬の歴代トップに浮上。来年も現役生活は続く予定だ。まずは世界最高の優勝賞金を誇り、連覇の懸かるサウジC(2月14日、キングアブドゥルアジーズ競馬場・ダート1800メートル)を視野に入れる。「本当に世界一の馬だと思います。こんなにうれしいことがあるんだなという気持ちです。この馬にふさわしい、世界一のジョッキーになれるように頑張っていきたい」と坂井。今後も人馬一体となって、さらなる高みを目指していく。

 ◆フォーエバーヤング 父リアルスティール、母フォエヴァーダーリング(父コングラツ)。

栗東・矢作芳人厩舎所属の牡4歳。北海道安平町・ノーザンファームの生産。通算成績13戦10勝。重賞9勝目。馬主は藤田晋氏。

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