スーパーバンタム級に転向したプロボクシング前WBC&IBF世界バンタム級王者・中谷潤人(27)=M・T=が、練習で使用するプライベートジムを建設していることが5日、分かった。場所は神奈川県内で、すでに内装は完成し、リングなども搬入されて練習を開始。

「練習したい時にいつでもできるように」と“秘密基地”で爆発力に磨きをかける。来年には世界4団体統一王者・井上尚弥(32)=大橋=を倒して世界4階級制覇の達成につなげる。

 待望の「ビッグバン・ジム」が完成間近だ。127・53平方メートル(約38坪)のスペースには、中谷とアンバサダー契約を結ぶ英国のボクシング専門ブランド・BOXRAW社製で、自身の愛称「BIG BANG」と書かれたリングを設置。強打やアッパーなど目的に合わせ、5種類ものサンドバッグを置く。「減量も入ってくるので」とランニングマシンやバイクもセットした。

 天井の高さは5・4メートル。「米国のジムは倉庫みたいな形で、天井が高いというイメージ。のびのびと練習ができるように」。15歳で単身渡米し、強くなりたい一心でボクシングに打ち込んだ時の光景をも思い起こさせるレイアウトは、中谷の決意やこだわりが込められたものだ。

 実戦練習はこれまで同様、M・Tジムや米国ロサンゼルスで行う。「練習をより煮詰める、じゃないですけど、やりたいことが増えてきた。

プライベート・ジムがあれば、練習したい時にすぐに始められる」。自分のために建設する練習場で誰に気兼ねすることなく、いつでも汗を流すことができる。

 総工費は明かさないが、現役選手がファイトマネーなどを充てて、これほどの規模の練習拠点をつくるのは異例だ。「強くなるためには、そうするべき」とキッパリ。自分への投資は惜しまず、強くなるために練習環境を整えることを考えたのだ。「まだ外構ができていないので、また工事が始まります」と完成は少し先となる。

 井上とのビッグマッチをにらみ、階級をスーパーバンタム級に上げた中谷。12月27日にサウジアラビアで予定されるWBC世界同級9位・セバスチャン・エルナンデス(24)=メキシコ=との転級初戦に向けて、近く渡米する。「もう一段、練習強度を上げてきます」と中谷。新たな“強化基地”を手に入れたビッグバンは、ますます強くなる。(谷口 隆俊)

◇中学時代には自宅に練習室 中谷がボクシングを始めたのは中学1年から。三重・東員町の自宅に近い桑名市のKOZOジムで元東洋太平洋スーパーバンタム級王者・石井広三会長(故人)から指導を受けた。

一日も欠かさず通ったが、帰宅後も練習をしたいという息子のために、両親は自宅隣に練習室を用意。10畳ほどのスペースにサンドバッグやスピードボールなどを設置した。中谷は放課後、ジムで2時間、帰宅後はさらに2時間、ボクシングに励んだ。中谷の激しい練習で、部屋の床はすり減り、父・澄人さんは何度も修繕したという。

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