大相撲九州場所初日(9日・福岡国際センター)  

 東前頭筆頭・伯桜鵬(22)=伊勢ケ浜=が横綱・豊昇龍(26)=立浪=を寄り倒し、3場所連続となる通算3個目の金星を獲得した。豊昇龍からの金星は初。

自己最高位で臨む今場所で、新三役昇進に向けて好スタートを切った。2場所連続Vを狙う横綱・大の里(25)=二所ノ関=は小結・高安(35)=田子ノ浦=を寄り切り、両横綱の初日は明暗が分かれた。

 拍手とどよめきがこだまする館内で、伯桜鵬は小さく息を吐きながら懸賞の束を受け取った。「狙っていた形。しっかり当たって前に出られて良かった」。豊昇龍の立ち合いの張り差しにも動じず左を差し、止まることなく一気に前進。横綱の苦し紛れの上手投げにも、素早く体を寄せて寄り倒した。3場所連続の金星にも、支度部屋では涼しげな表情。「逆にもっと緊張感を持った方がいいくらい、冷静だった。まだ始まったばかり。気持ちを引き締めていきたい」と話した。

 横綱に“恩返し”を果たした。

伯桜鵬は新入幕だった23年名古屋場所で優勝争いを演じ、「令和の怪物」として一世を風びした。豊昇龍には同場所の千秋楽で敗れ、賜杯を逃していた因縁もある。また巡業の稽古場では横綱から事細かに助言を授かり、稽古では胸を借りて自信を深めてきた。「自分のことを気にかけてくれる横綱に、初めて勝てたのでうれしい」と、感謝と喜びを口にした。

 この日は元小結・遠藤の北陣親方の現役引退会見が行われた。入門前には地元・鳥取の巡業で胸を借りたことがあったという。「遠藤関に胸を出してもらった時にビックリした。プロになって勝てた時はうれしかった」と、感慨深げに振り返った。また稽古場では新たに前みつを取る相撲に取り組むが、参考として遠藤の取組映像をチェック。「ああいう相撲が取れるようになりたい」と憧れを語った。

 伯桜鵬は25年の目標に『三役昇進』を掲げていた。1月の初場所で再入幕後から5場所連続で勝ち越し中。

一年納めの今場所は、三役目前の東前頭筆頭まで番付を上げた。2日目は2場所連続で勝利している横綱・大の里戦。10月中旬のロンドン公演の現地実況では次なる大物を意味する「The Next Big Thing」と紹介された大器が、さらに波乱を起こす。(大西 健太)

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