◆明治安田 J1リーグ▽第36節 G大阪1―1神戸(9日・パナスタ)

 G大阪は神戸と引き分けた。MF奥抜侃志は、後半35分に先制点をマークした。

 試合開始から激しくぶつかり合った。セカンドボールの回収、切り替えの速さなど、神戸の持ち味でもある部分でも真っ向勝負。MF美藤倫、MF安部柊斗のボランチ2枚が中盤で戦い、縦への意識もチームとして強く持って何度もゴールへ迫った。対する神戸も引き分け以下なら優勝の可能性が消える状況もあり、一歩も引かず。0―0で前半が終わった。

 そのままスコアレスで迎えた後半34分に奥抜は出場。すると、ペナルティーアーク付近でFWイッサムジェバリから縦パスを受け、細かいボールタッチで右へスライド。相手DFの素早い寄せを交わして右足を振り抜き、ファーストタッチでニアゾーンに突き刺した。加入後初、自身J1初となるゴールに「早く点が取りたかった。けがをしてなかなかうまくコンディションも戻らず、いい結果が出せなかったので。今まで積み重ねてきたリハビリとかやってきたものが結果として残ったのですごい良かった」と安堵(あんど)にも似た表情を浮かべた。

 2022年8月にJ2大宮から欧州へ渡り、ザブジェ(ポーランド)、ニュルンベルク(ドイツ)でプレーした。

最高速度35・8キロ(今季最高は岡山・ウェリックポポの35・5キロ)の快足ウインガーとしてG大阪に今季加入。2月14日のC大阪戦(2●5)、本拠での「大阪ダービー」で早速先発デビューを飾ったが、思うように爪痕は残せず後半42分で交代した。ほとんどの時間に出場しながら「インパクトを残せなかったと思う」。本拠で感じたサポーターの期待感にも応えたい一心だったが、4月には「左足関節前方および後方インピンジメント症候群」で手術。スプリントを武器とする奥抜にとって、足首の負傷はさらに不安も残った。「曲げるのがまだ怖い」と痛みも感じながら可動域が狭まらないように何度も足首を伸ばし、「J1も初で、最初は日本の環境とサッカーに適応するのが難しかった」と明かす自身にとって苦しい期間が続いた。

 一方で、リハビリ期間は「(最高速度)36キロを出したい。走り方も含めて」と、自らを見つめ直す時間でもあった。「今まで細かったので(笑)」と筋力トレーニングにしっかりと時間を割き、疲労回復系のサプリやプロテインも摂取。足首の完治だけでなく成長した姿で戻るため、新たに徹底したことだ。6月、7月には久しぶりに体感する日本の夏に「暑すぎる…」と苦笑いを浮かべたことも。でも、その頃には腕を見れば筋肉の変化は一目瞭然だった。

 トレーナーや、ニュルンベルクでもチームメートで現在リハビリに励むFW林大地らとも共にトレーニングを重ね、8月2日、フランス2部Sランスとの親善試合で実戦復帰を果たした。持ち味であるサイドからの仕掛けも試合を重ねるごとに増え、存在感は増す。そんな中で、生まれた待望の初得点だった。ゴール後の手荒い祝福から、愛されキャラが垣間見える。「服を引っ張られたりしましたけど(笑)、みんなたたえてくれた。しっかりと結果が出せたので良かった」と、本人も笑顔で振り返った。喜ぶと同時に、ドロー決着で反省も述べた奥抜。次こそ自らの得点でチームを勝たせる。

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