◆第56回明治神宮野球大会▽2回戦 花巻東3―1崇徳(15日・神宮)

 ドジャース大谷翔平投手(31)の母校・花巻東(東北)が崇徳(中国)に勝利し、4強入りした。今季まで巨人の内野守備走塁コーチを務めた古城茂幸氏(49)の次男・大翔(だいと)内野手(2年)は「4番・三塁」で出場。

木製バットを操り、0―0の6回には大谷バリの“マン振り”で左中間にソロアーチを架けるなど、4打数2安打1打点の活躍で初戦突破に貢献。満票で3年連続のMVPに輝いた海の向こうの大先輩に“祝砲”を贈り、同校初となる日本一へ、あと2勝に迫った。

 左右の違いはあれど、大谷先輩をほうふつとさせるフルスイングだった。6回2死走者なし。古城が内角に入り込んだ直球を、振り切ったバットが背中に届くほどの“マン振り”で捉えた。上半身を反って放った打球は、左中間のスタンドへ消えた。「多少厳しい球でも行かないとダメだなと。どんな形でもつなげられたらと思って打席に入りました」と4番の力を見せつけた。

 崇徳のプロ注目左腕・徳丸凜空(りく・2年)の公式戦連続イニング無失点を35で止める貴重な先制本塁打に「かなり良いスイングができた。手応えがすごく良かったので、次の試合に向けても自信になった」と胸を張った。花巻東の選手が同大会で本塁打を放つのは、21年の準決勝・広陵戦の佐々木麟太郎以来3人目。右打者では初となった。

 しかも木製バットで、だ。「金属だと軽く当てただけでも飛んでしまう」と、昨年11月から導入。この日の一発は高校通算25号。「当てるだけでは飛ばない。体全体を使って打てば飛ぶということに気づかされた」。木製では21本目の本塁打となった。

 偉大な先輩の活躍が原動力だ。同校OBのドジャース・大谷が13日、ナ・リーグMVPに満票で選出されたばかり。3年連続4度目の受賞で尊敬の念は大きくなるばかりだ。「翔平さんと同じユニホームを着てプレーできているということに、すごく誇りを持っています。素晴らしい賞を受賞したと聞いて、自分も近づけたらいいな、という思いが日に日に強くなっています」。今なお歴史に名を刻み続ける大きな背中を必死に追いかけていく。

 内野手として巨人など通算16年で767試合に出場した父・茂幸氏もスタンドから約4か月ぶりに声援を送った。「周りに恵まれて、すごく良い感じに成長したなと感じます」。堅実な守備とシュアな打撃で活躍した父はプロ通算9本塁打。息子の豪快な一発に「びっくり。すごいなと思いました。僕じゃ無理ですね」と笑顔でたたえた。

 1年夏から3季連続甲子園に出場中。4番を担ってきた背番号5は、既に来秋のドラフト候補としてNPBスカウトからも注目されている。視察した巨人・斉藤スカウトは「木製バットで左中間までもっていけるのはすごい。守りでも、動けて肩も良い。右のサードで面白い選手」と目を見張った。

 今秋からは新たに主将を務める。

責任と期待が重くのしかかるが、「最終学年として自覚が芽生えた」と前向きだ。「振り切る意識にかなり自信がついてきた。もっと磨き上げて、打撃の技術を上げていきたい」。チームを頂点へ導き、海の向こうで活躍する先輩のように、その名をとどろかせる。(北村 優衣)

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