女優の筒井真理子(65)が俳優の高田万作(18)とダブル主演する映画「もういちどみつめる」(佐藤慶紀監督)が22日に公開初日を迎える。山のキャンプ場を舞台に、生きづらさを抱えた人々が心を通わせる物語。

筒井は現在、放送中のTBS系ドラマ「フェイクマミー」(金曜・後10時)にレギュラー出演するなどオファーが絶えない売れっ子だが、「どんなに作品を掛け持ちしても、この映画はやりたかった」と愛着を語った。(有野 博幸)

 壮大な自然の中で生身の人間同士の触れ合いを描く。キャンプ場を営む典子を演じた筒井は「作品を作っているというより、実験しているようなワクワク感がありました」と声を弾ませた。

 映画「旅と日々」(三宅唱監督)で注目される高田と初共演。筒井演じる典子は、複雑な家庭環境で育ち、少年院を出所した甥(おい)のユウキ(高田)と対話を重ね、寄り添う。「私も実際に姉がいて、おいっ子もめいっ子もいる。パソコンの操作とか、分からないことを教えてもらったり、頼りにしています。親子とも違う絶妙な距離感ですよね」

 高田の18歳とは思えないほど、落ち着いた存在感に魅了された。「いい意味で影がある。たたずまいがいいですよね。高田くんが素朴で真っすぐなので、私も自然と叔母ちゃんになれました」。撮影期間を終えて、久しぶりに再会すると「背が伸びて、大人っぽくなっていました。

あの年代で、あんなに味のあるお芝居ができる俳優さんは少ない。とても希有(けう)な存在だと思います」と将来性に太鼓判を押した。

 さまざまな人物を演じる仕事のため、以前から心理学に興味を持ち、専門書を読み、勉強している。「精神的な病気には、いろいろな原因がありますが、共通しているのは『愛情の不足』らしいです。そう思うと人間って尊いなと思いますよね」。そんな思いも込めて、典子を演じた。撮影現場は少数精鋭で5人ほどで撮影したことも。家族のような一体感で作品を作り上げた。

 映画だけでなく、7月期のフジテレビ系「愛の、がっこう。」では木村文乃(38)の母親役、10月期のTBS系「フェイクマミー」で波瑠(34)の母親役を演じるなどドラマにも引っ張りだこだ。「最近は主人公のお母さん役が多いですね。主人公のバックグラウンドが豊かに描かれたら、作品自体が豊かになると思うんです。それも言葉で説明するのではなく、演技や存在感で表現できたらいいなと思っています」

 昨年1月期のフジテレビ系ドラマ「春になったら」では、木梨憲武(63)演じる雅彦の姉・まき役を好演した。

生花店の店主で、実は元ヤンという役どころ。「髪形をドレッドにしたり、楽しかったですよ」。木梨から「お姉ちゃん」と慕われ、ドラマの放送後も親交が続いている。木梨プロデュースで歌手デビューを果たし、イベントに出演したこともある。

 前事務所の閉鎖にともない、しばらくフリーで活動していたが、今年2月に小栗旬(42)が社長を務める芸能事務所「トライストーン・エンタテイメント」に加入した。「去年、忘年会に参加して家族のような雰囲気を感じました。小栗さんからは『筒井さんのことは子供みたいなものだと思っています』と言われて、とってもうれしかったです。ハートが温かくて、素敵ですよね」

 根っからの芝居好きで意欲が衰えることはない。「アクションにも挑戦したいし、大人のラブコメもやりたい。無頼派の刑事もやってみたい」。その中でも特に熱望しているのは、日本人初の国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さん(享年92)の役だ。「武装テロ組織に、何も持たずに交渉に行く姿が素晴らしい。

あんな素敵な女性を演じてみたい」と目を輝かせた。

 ◆「もういちどみつめる」 キャンプ場を営む典子の元に1年前に少年院を出所したおいっ子のユウキが訪れる。典子はユウキをアルバイトとして雇い「私にできることは、あなたの話を聞くことだけ」と寄り添う。「世界の見方はみんな同じじゃない」と言う典子に、ユウキは心を許していく。ある日、典子の息子でユウキのいとこである健二が、友達を連れてキャンプ場にやってくる。113分。

 ◆筒井 真理子(つつい・まりこ)1960年10月13日、山梨県甲府市生まれ。65歳。早大在学中の82年、劇団「第三舞台」で初舞台。94年の「男ともだち」で映画初主演。2016年、映画「淵に立つ」がカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞。主な出演作は19年の映画「よこがお」、23年の映画「波紋」など。

健康法はよく食べて、よく笑い、よく寝ること。身長162センチ。血液型AB。

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