今年50回を迎える報知映画賞。受賞のインタビューや表彰式では、スターたちがスクリーンとは異なるさまざまな表情を見せてきた。

映画賞を取材してきた歴代担当記者が、印象に残ったシーンを振り返る。

 度重なるスキャンダルから復活を遂げた沢尻エリカ(39)が、美少女モデルから女優へと、一躍注目を集めたのが、井筒和幸監督の映画「パッチギ!」だった。1968年の京都を舞台に、在日朝鮮人と日本人の間の友情と深い溝を描いた同作では、ヒロインのキョンジャを愛らしく演じ、数多くの新人賞をかっさらった。

 当時19歳。11月の受賞者発表と12月の表彰式の紙面では、ともに「肝っ玉」の見出しが躍っている。辛口コメントで知られる井筒監督に「肝の据わり方が違う。めったに出会えない子やね」と言わしめた“超大物ルーキー”は、取材でも強烈な印象を残した。

 男性俳優たちを半泣きにさせた監督の鬼指導を「特に怖いと思わなかったですね」と平然と振り返り、「日本映画を変えたいんです」と言い放った。新人賞らしく初々しい笑顔を求めるカメラマンのリクエストにもどこ吹く風。「今の役者はみんなかっこつけようとするねんけど、エリカちゃんはどっからでも撮ってみろという覚悟があった」という監督の言葉が彼女の魅力を的確に言い当てていた。

 恐れを知らない度胸は、使い方を間違えると諸刃の剣となる。表彰式から2年後、映画の舞台あいさつで不機嫌をまき散らした「『別に…』騒動」をきっかけに、私生活のスキャンダルが相次ぎ、表舞台から姿を消す。

しかし昨年の舞台で4年ぶりに活動を再開。来年2月27日には7年ぶりの映画「#拡散」(白金監督)が公開される。沢尻の肝っ玉が、久々のスクリーンでどんな輝きを放つのか注目したい。(高橋 誠司)

 〇…他の賞と違い、一生に一度しか選ばれない新人賞。最年少受賞は、田畑智子(第18回)、松田まどか(25回)、吉岡竜輝(38回)、中西希亜良(49回)の13歳。また、新人賞から演技賞を獲得したのは、原田美枝子(1回→11回助演、21・23回主演)、永島敏行(3回→6回主演)、石田えり(6回→13回助演)、松たか子(22回→29・34回主演)、田中麗奈(23回→42回助演)、池脇千鶴(24回→38回助演)、石原さとみ(28回→49回主演)、小松菜奈(39回→44回助演)、蒔田彩珠(43回→45回助演)の9人がいる。

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