◇JFL第29節 YSCC横浜3―2アトレチコ鈴鹿(16日・上野公園陸上競技場)

 試合前の勝ち点が27で14位だったYSCC横浜は、同28アトレチコ鈴鹿との6ポイントマッチを制して、最終節(第30節)を前にJFL残留を決めた。

 前半終了時点で0―2も、後半33分から3発をたたき込んで鮮やかに逆転。

尾松剛監督は「いつもであれば崩れていくゲームだったが、今まで積み上げてきたものがピッチに投影されて逆転につながった、うれしいゲームになった」と笑みを浮かべた。

 連敗、アウェー、6ポイントマッチ…。厳しい条件下の中、さらに試合は前半のうちに2点のビハインド。苦しい展開にも指揮官は冷静だった。ハーフタイムでは「まずはテクニカルスタッフの中で前半戦を総括して、選手に何を伝えるべきが話し合う。その間にコーチが選手からの要求を拾う。(両者の意見を)照らし合わせながら、どの情報を出すか考える。ただ、僕たちが提示したいものよりは、選手にとって何が一番いいのかが大事」と情報共有を徹底した。

 選手の意見を優先する理由は「選手自身で解決していく能力はとても大事だから」。実際に尾松監督は2失点した前半を「自分たちが表現したいゲームにはなっていた」と評価し、1つだけ特定の指示を出して、あとは「選手たちを信じていた」と手を打たなかったという。

 ただ、その1つの指示で試合は大きく変わった。指揮官は「相手3ボランチの間に自チームの2ボランチを立たせる」と指示を出した。

すると、相手3ボランチがYSCC横浜の2ボランチを警戒することで中央に集中がいき、サイドがぽっかり空いた。そして、3得点は全てサイド攻撃から。1点目は右ポケットを狙ったMF菊谷篤資(あつし)のスルーパスが相手に当たってコーナーキックを獲得。セットプレーを決めて1点目。2点目は右サイドからDF増谷幸祐のドンピシャクロス。3点目は右サイドで複数人が絡んだ細かいパスワークで相手を引きつけ、一気に裏を取って勝負あり。指揮官の計算どおり、サイド攻撃から3得点が生まれた。

 今年の7月に就任した尾松監督は、当初吉野次郎社長から「腰の引けたゲームをしないでほしい」と要請があったという。指揮官は「失点の多いチームが攻めに出るのは常識から外れるが、攻めることを貫いてきた」と強調。「そういった意味では、今日の試合の中でその魂が投影されたかな」と満足げに語った。

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